187cmという高身長と優しげな甘い顔立ちを活かし、韓国ドラマ界で確固たる地位を築いてきた癒し系俳優、チ・ヒョヌ。今年4月に逝去した田村正和の主演ドラマ「美しい人」(1999年)の韓国リメイク版である「悲しくて、愛」(2019年)をはじめ、数多くのラブロマンス作品に出演し、"恋愛ドラマの王様"とまで称されている。
途切れることなく活躍を続けるヒョヌだが、近年は大人のラブロマンスに加え、まったく違うジャンルの役柄にも挑戦している。アジアドラマチックTV (アジドラ)にて6月29日(火)より放送される「錐(キリ)」(2015年)がまさしくそうだ。
韓国で高い評価を得たチェ・ギュソクの人気WEB漫画を映画化した「錐(キリ)」は、世の不条理や闇の部分に躊躇なく斬り込んでいく骨太な社会派ドラマ。大手スーパーを舞台に、韓国で社会問題の1つになっている劣悪な労働環境が取り上げられている。
原作の持つ緻密なストーリーの面白さはもちろん、SUPER JUNIORのメインボーカル、イェソンのドラマ初出演作としても注目を集め、韓国放送時にはオンライン上の書き込み件数が全話累計150万を超えるなど大反響を巻き起こした。
これまでのキャリアの中でも異質といえる本作で、ヒョヌが演じたのは、臆病で争いごとを嫌う一方で不義や不条理が我慢ならない男・スイン。見る者の心を癒す穏やかな微笑みは封印し、虐げられている従業員たちの権利を取り戻すために組織に逆らって"闘う男"を熱演している。
イェソン演じる若き従業員が不当に解雇されそうになる事件などを経て、少しずつ仲間を増やしながら、真っ直ぐに組織の強大な壁に立ち向かっていく。韓国のみならず日本でも他人事と思えないリアルな描写には、働く人の多くが共感を覚えるのではないだろうか。
紆余曲折の末に訪れた労働相談所で労働運動家、ゴシン(アン・ネサン)と出会い、卑劣な組織との闘いを加速させていくスイン。決して特別な人間ではなく、社会の矛盾に絶望しながらも、決して折れない男――そんな硬派な表情は、これまでのラブロマンス作品では見たことがない。見る者を飽きさせない真に迫った演技は、現状に満足することなく、役者としての更なる高みを目指す決意の表れとも感じられる。
今年に入ってからも、話題のドラマや映画への出演が相次ぎ、年齢を重ねるごとに新たな魅力を見せてくれるチ・ヒョヌ。その成熟した演技に今後も期待したい。
文=中川菜都美
放送情報
錐(キリ)
放送日時:2021年6月29日(火)13:30~
※毎週(月)~(金)13:30~
チャンネル:アジアドラマチックTV (アジドラ)
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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