アイドル出身ならではのスキルを覗かせる？中国ラブ史劇で際立つファン・イールンの「高貴な美貌」

ビジュアルに優れたK-POPアイドルが俳優としても活躍する例は珍しくないが、端正なルックスの新進俳優を多数輩出している中国ドラマ界でもそれは同じ。「陳情令」(2019年)で大ブレイクしたシャオ・ジャンやワン・イーボーのように、昨今、頭角を現してきたイケメン俳優には、アイドルグループ出身者や元アイドル練習生も多い。

アジアドラマチックTV (アジドラ)で3月3日(木)より放送される宮廷ロマンス「明月記～夢うつつの皇女～」で主演を務めたファン・イールンもその一人。同作では、これまで数々の作品で"王族イケメン"を演じてきたイールンの真骨頂、やんごとなき正統派イケメンぶりが堪能できる。

2013年にM4Mという4人組ボーイズグループの一員として韓国・中国で同時デビューしたイールン。同じく中国で高い人気を誇る塩顔イケメン俳優、シン・ジャオリンとは「明月記」のチームが手掛けた大ヒットドラマ「寵妃の秘密3～時空を結ぶ運命の約束～」で共演しているが、ジャオリンもまた韓国の大手事務所SM ENTERTAINMENTの元練習生というキャリアの持ち主だ。

演技力の高さもさることながら、アイドルに求められる美しい声や抜群のスタイル、ダンスもこなす身体能力の高さ、端正なルックスも兼ね備えた彼ら。そうした要素が俳優業でも大きなアドバンテージとなっていることがよく分かる。

俳優としてのイールンが脚光を浴びたのは、2019年のドラマ「絶世令嬢～お嬢様はイケメンがお好き!?」で演じた、ヒロインの護衛を務めるミステリアスかつセクシーな皇子役でのこと。

その後も、主演を務めた「明月記～夢うつつの皇女～」(2019年)での皇子役を筆頭に、「寵妃の秘密3」(2020年)では公主(王女)と結婚する"正妻"(※男女逆転のパラレルワールド内での設定)に扮し、「万華楼〈ばんかろう〉～金糸が紡ぐ運命の恋～」(2021年)ではヒロインに一途なアプローチを繰り広げる第6皇子...と、立て続けに王族を演じているのだから、彼のキャリアに浸透した"王子様キャラ"を意識しないわけにはいかない。

「明月記」で演じているのは、汐月国の公主であるヒロイン・李明月と政略結婚させられることになった北宣国の皇子・李謙。よく言えば真面目で思慮深く、悪く言えば堅物で潔癖な性格の持ち主で、おてんばな明月とぶつかりながらも、彼女に少しずつ惹かれていく。

この李謙、第1話での登場シーンからしてカッコいい。輿入れのため北宣国に入った明月一行が賊に襲われた場面で颯爽と現れ、華麗な身のこなしで賊を蹴散らすと、名乗ることもなく去っていく覆面の男――この絵に描いたようなヒーローこそ李謙その人で、冒頭から主役たる存在感を強く印象づける。

その後、皇宮で明月と対面した李謙は、そんなヒーロー像から一転、冷徹な"オレ様"キャラとして再会を果たす。あまりに傲慢で冷たい李謙の態度に憤慨する明月だったが、彼女の操る秘技"催眠術"が有益だと知った李謙が態度を一変させ、婚姻に同意すると言い出す...という前途多難な2人の恋模様が描かれていく。

序盤こそ波乱含みだが、表向きはあくまで上から目線の態度をとりながらも、内心では型破りな明月にドキドキしまくっている李謙の慌てぶりがなんとも可愛らしい。明月に振り回されるうちに彼女に惹かれていく様子にもキュンとさせられる。

ある時は愛嬌たっぷりの堅物キャラ、またある時は恋に積極的なプレイボーイ。そしてまたある時は、秘めた思いを打ち明けられない内気な青年――と、同じ"皇子"役とは言え全くタイプの異なるキャラクターを演じ分けながら、イールンが演じる人物に共通するのはその高貴さ。古装姿がしっくりとハマり、家臣に慕われる皇子像がこうも説得力をもって演じられるのも、本物のイケメンの証だ。

1992年生まれのイールンは今年、30歳の節目を迎える。正統派のルックスに加え、成熟した大人の魅力も身につけつつある有望株だけに、これまでの皇子役で実証済みでもある、その麗しい存在感を改めてじっくりと堪能したい。

文＝酒寄美智子

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