【タカラヅカ】雪組トップコンビ・早霧せいな咲妃みゆのラストステージ「幕末太陽傳」

「幕末太陽傳」
「幕末太陽傳」

「幕末太陽傳(ばくまつたいようでん)」と聞くと、 映画好きの人ならピンと来るかもしれない。「鬼才」とうたわれた川島雄三監督の伝説の名作として、映画ファンの間では知られる作品だからだ。時は幕末、品川の遊郭「相模屋」に無一文でやって来た佐平次は、どんちゃん騒ぎをやらかした挙句、金が払えず「居残り」を決め込むが、持ち前の才覚と愛嬌(あいきょう)で重宝がられ、あっという間に廓(くるわ)の人気者になっていく。一方、この店には高杉晋作ら攘夷派の長州藩士らも潜伏しており、異人館の爆破を目論む。やがて、佐平次と晋作の間に不思議な男の友情が芽生える。

実はこの物語、落語の「居残り佐平次」ほか、「品川心中」「三枚起請」「お見立て」といった噺(はなし)を題材として構成されている。つまり映画ファンも落語ファンも注目の一作なのである。映画ではフランキー堺が演じた佐平次をタカラヅカ版ではトップスターの早霧せいな、相模屋の女郎・おそめをトップ娘役の咲妃みゆ、そして石原裕次郎が演じた高杉晋作を、早霧の後を受けて雪組トップスターとなった望海風斗が演じている。タカラヅカ版で演出を担当した小柳奈穂子自身がこの映画に強い思い入れがあり、それが舞台化の発端だったという。おおむね映画に忠実な作りだが、ラストシーンなどにタカラヅカらしい脚色も施されている。

「幕末太陽傳」 早霧せいな

~原作 映画「幕末太陽傳」(C)日活株式会社 監督/川島 雄三 脚本/田中 啓一、川島 雄三、今村 昌平~ (C)宝塚歌劇団 (C)宝塚クリエイティブアーツ

この作品は雪組トップコンビ・早霧せいな&咲妃みゆの退団公演でもあった。トップスターの早霧せいなは端正な美貌と高い身体能力で、2.5次元作品の「ルパン三世」「るろうに剣心」といった話題作でも主演。繊細なお芝居で涙を誘った「星逢一夜(ほしあいひとよ)」の主人公・天野晴興なども思い出深い。佐平次役はそんな早霧の集大成に相応しく、一見タカラヅカらしからぬ役どころを自由自在に演じてみせる。羽織の両袖にさっと腕を通す仕草も粋なものだが、ひょうひょうとした振る舞いの奥には秘めた悲しさも見え隠れする。

「幕末太陽傳」 咲妃みゆ

~原作 映画「幕末太陽傳」(C)日活株式会社 監督/川島 雄三 脚本/田中 啓一、川島 雄三、今村 昌平~ (C)宝塚歌劇団 (C)宝塚クリエイティブアーツ

トップ娘役の咲妃は、可憐さと抜群の芝居心で早くから注目され、「春の雪」の綾倉聡子、「月雲の皇子」の衣通姫など、数々のヒロインを演じてきた。この作品でも、勝気だが健気なところもある、おそめを咲妃らしく演じてみせる。どちらかというと「陰」の魅力を持つ咲妃と「陽」の早霧、互いの魅力を引き立て合い、多くのファンから愛された2人は、近年を代表する名コンビといえる。

さらにこの作品は、鳳翔大(ほうしょうだい)、香綾しずる(かりょうしずる)、桃花ひな、星乃あんり、蒼井美樹ら、雪組を支えてきた個性的なメンバーの退団公演でもあり、それぞれに見せ場が作られている。落語「品川心中」で心中の道連れにされてしまう貸本屋の金造を鳳翔が演じ、コミカルさの中にもさりげない色気を感じさせる。52歳にして色に溺れてしまう姿が愚かしくもおかしい鬼島又兵衛に香綾。こうした役を屈託なく演じてみせるところが彼女らしい。おそめに対抗する相模屋の看板女郎・こはる役で、星乃もまた娘役の集大成を飾っている。「日本物の雪組」が見せる舞台は、舞台上の誰を見ても、どの場面を取ってもこなれていて不安がない。

「Dramatic "S"!」

(C)宝塚歌劇団 (C)宝塚クリエイティブアーツ

同時上演されたショー「Dramatic "S"!」の「S」には、ショースター(Show Star)として輝き(Splendor)を放つ早霧せいな(Seina Sagiri)率いる雪組(Snow troupe)が見せるショーシーン(Show Scene)と、数々の意味が込められている。サヨナラ公演ならではの心憎い演出も盛り込まれたショーだ。空前の人気となった公演の千秋楽の模様からは、客席の熱気も伝わってくる。

文=中本千晶


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放送情報

『幕末太陽傳』('17年雪組・東京・千秋楽)

放送日時:2018年7月22日(日)20:00~


『Dramatic “S”!』('17年雪組・東京・千秋楽)

放送日時:2018年7月22日(日)21:45~


チャンネル:TAKARAZUKA SKY STAGE

※放送スケジュールは変更になる場合がございます。

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