千葉雄大をとことん甘やかす永山絢斗。芝居に魅せられた男たちのスリリングな共依存関係を描くドラマ「ダブル」

天才とその近くにいる秀才型の男。スポーツを題材にした作品はもちろん、モーツアルトとサリエリが登場する名作映画『アマデウス』など、古今東西、そんな羨望と嫉妬が入り交じる関係を描く物語はある。野田彩子の漫画をドラマ化した「ダブル」(WOWOW)は、演劇を通して出会った2人の俳優の共依存的な関係をスリリングに描き出している。

「ダブル」で主演の永山絢斗、千葉雄大
「ダブル」で主演の永山絢斗、千葉雄大

東京の下北沢を拠点に活動している劇団の役者、鴨島友仁(永山絢斗)は7年前、同じ劇団に入った宝田多家良(千葉雄大)と同じアパートに住み、生活能力がない彼の世話を甲斐甲斐しく見てきた。演技の上でも、台本の文字を読むのが苦手な多家良のために、一緒に役柄を分析して役づくりをし、多家良は友仁に頼り切っている。しかし、多家良が芸能事務所にスカウトされ、映画やドラマの仕事に力を入れることに。ルックスに華があり"人たらし"の多家良はどんどん役を得ていき、友仁はそれを我がことのように喜びつつも、自分も役者としてステップアップしたいと忸怩たる思いを抱える。

千葉雄大は、30歳にして精神的に自立できていない多家良を嫌味なく表現。思わず守ってあげたくなるような幼さとピュアさ、そして危うさを醸し出している。現実的に考えると、さすがに30歳過ぎて自分で朝起きられないのはいかがなものか、仕事先への乗り換え検索もスケジュールも友仁に任せっきりなのはどうなのかとツッコミたくなるが、千葉が演じているから許せてしまう。多家良をとことん甘やかす友仁の気持ちにシンクロして、社会不適合者のような、そのままの多家良で成功してほしいと思う。しかし、今後、多家良は仕事で壁にぶち当たり、千葉は"芝居がうまくできないという芝居"をすることになるので、そこにも注目したい。

永山絢斗が演じる友仁は、「インビジブル」(2022年TBS系)で演じた悪役とはまったく異なる境遇だが、ある種の狂気を含み、親しい人に執着するという意味では似ている。ここでは分厚い眼鏡をかけ、イケメンオーラを消して地味な存在になりきっている。友仁には惚れ込んだ多家良が世に出ていくのを誇らしく思う気持ちと、多家良に比べて才能がない自分にコンプレックスを感じる気持ちの両方があり、その複雑な状況をナチュラルに演じているのがすごい。

ちなみに千葉と永山は昭和最後の年の生まれで同い年。"ギリギリ昭和"の彼らが平成という日本経済の失われた30年を経て30代になったがまだ経済的基盤を持てていない男たちを演じているのが、社会の縮図のようで興味深い。多家良が芸能人としては遅咲きのスターになれるのか、それとも自己完結した演技のできる友仁がバイプレーヤーとして頭角を現わすのか。2人の立場の逆転劇もありそうで先が読めず、最後までハラハラしながら楽しめそうだ。

文=小田慶子

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放送情報

ダブル 「第一話」
放送日時:2022年6月11日(土)12:30~
チャンネル:WOWOWプライム、WOWOW4K
ダブル 「第二話」
放送日時:2022年6月11日(土)22:30~
チャンネル:WOWOWプライム、WOWOW4K
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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