毎回一人の声優に注目し、厳選した吹替映画を特集放送しているムービープラスの「吹替王国」。
12月23日(土・祝)に放送される「吹替王国」で取り上げられるのは、洋画、海外ドラマ、アニメと幅広く活躍している女性声優・田中敦子。
熱烈なファンを持つアニメ「攻殻機動隊」シリーズの主人公・草薙素子役でもおなじみの彼女が吹き替えを務める映画が、ムービープラスで4本特集放送される。
今回「吹替王国」で紹介される初の女性声優となり、さまざまな作品で活躍している彼女にインタビューをした。
-今回は、草薙素子を演じる劇場版アニメ「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊2.0」(95年公開作のグレードアップVer.)と、ケイト・ベッキンセールの声を吹き替えたコメディ映画「ミラクル・ニール!」、シリアスな「リーガル・マインド~裏切りの法廷~」、そしてエリザベス・シューの声を担当したSF作品「インビジブル」の4作品が特集放送されますが、いかがですか?
田中敦子(以下・田中):「それぞれ、いろんなジャンルから選んでいただいた作品で、アニメは95年に収録したもの。そして、吹き替えは"日曜洋画劇場"用に録ったものと最近DVD用に録ったものですね。役柄も含めて、いろんな時代の私の吹き替えを楽しんでいただけたら幸せです」
-放送されるのは劇場版アニメーションと、洋画吹き替え作品ですが、アニメと洋画とでは、お芝居をするときのアプローチはどこか違うのでしょうか?
田中:「お芝居をする上では一緒ですが、いつも現場で感じるのは工程の違いでしょうか?洋画の場合は音楽も効果音も完成されたものからインスピレーションを得て、役の心情を日本語で表現するのが主体です。一方のアニメーションはまだ絵も完全にできていない状態で収録をしていき、完成品は監督の頭の中にしかない状態。ですから、音響監督からの説明や演出リクエストを受けながら、みんなで作り上げていくという感覚が強いです」
-今回放送される『ミラクル・ニール!』と『リーガル・マインド~裏切りの法廷~』は、同じケイト・ベッキンセールの出演作ですが、吹き替えをする際、同じ女優さんであることはどのぐらい意識されるんですか?
田中:「ケイト・ベッキンセールにしても、よく吹き替えさせていただくニコール・キッドマンにしても、作品によってキャラクターも表情も役作りもまったく異なるので、その作品から受けるイメージで演じています。例えば、ケイト・ベッキンセールは『アンダーワールド』シリーズではヴァンパイアですが、『リーガル・マインド~裏切りの法廷~』では弁護士といった感じでまったく違った表情をしていますから、人物と言うより作品のイメージですね」
-では同じくケイト・ベッキンセールが出演するコメディ作品『ミラクル・ニール!』のアフレコでは、いつもより高いテンションで臨まれたりするのですか?
田中:「う~ん、どうでしょう?いただく役って、だいたい決まってくる気がするんです。私の場合はなぜか医者や弁護士、刑事など、頭の切れる役柄を振っていただくことが多いのですが、私自身はちょっと天然な感じなので、真逆の方向なんですけども(笑)。コメディ作品は、必ずキャスティングされる声優さんがいて、その方々とご一緒するだけで気持ちができあがります。『ミラクル・ニール!』の場合は犬のデニスの声をロビン・ウィリアムズさんが当てていらして、その声を岩崎ひろしさんが吹き替えていたのですが、この作品がロビン・ウィリアムズさん最期の作品だったんですね。ですから、追悼の意味を込めて、岩崎さんがかなりいろいろなアドリブやネタを盛り込まれていたので、とても楽しかった記憶があります」
-そういうアドリブには、アドリブで返すんですか?
田中:「アドリブが来たら、できる限りアドリブで返したいんですけど、本番収録のときだけにアドリブを入れてくる方もいるので、その時にうまく返せないと"悔しい"と思ったり、"もっとうまくできたのでは?"と思ったりします(笑)」
-今回放送される「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊2.0」は、「吹替王国」史上初のアニメーション作品となります。草薙素子役を最初に演じたのは95年になりますが、当時はどんな演出を受けたのですか?
田中:「素子は全身を義体化(サイボーグ化)しているから肉体は20、30代だけど、脳内設定が40、50代で達観した感じの女性で演じてほしいと、押井(守)監督から言われました。当時の私はまだ20代で若かったので、声の高低よりもそこを意識することで精一杯でした」
-今作は日本アニメ史に名を刻む歴史的作品だと思いますが、田中さんにとってはどんな作品ですか?
田中:「『攻殻機動隊』がなかったら、私はここにいなかっただろうなと思っています。私のターニングポイントとなった作品であり、私をこの世界に居させ続けてくれる道しるべのような大切な作品です。今でも役をいただく時はオーディションを受けるのですが、実際、落とされることの方が多いんですね」
-えー!?そうなんですか?
田中:「そうなんですよ(笑)。洋画の吹き替えのオーディションは声のサンプルをハリウッドに送って、向こうで選考を行う事が多いので、長くやっているニコール・キッドマンの役でも落とされることが多いんです。私はオーディションに通ることはそんなに多くないと思っているので、声優人生の初期の頃に草薙素子を演じさせてもらえたことは奇跡的なことだと思っています」
-『攻殻機動隊』を原作としたハリウッド実写版「ゴースト・イン・ザ・シェル」(2017年春公開)でも、スカーレット・ヨハンソン演じるミラ・キリアン少佐を吹き替えていましたよね。
田中:「スカーレット・ヨハンソンは別の役者さんがよく声を当ててらっしゃるので、他の方が演じても不思議じゃなかったのですが、"素子"はまた私を選んでくれたんだなと不思議な気持ちになりました。それにほかの声優陣も劇場版アニメ『GHOST IN THE SHELL』の声優陣と合わせていただきましたので、大塚(明夫)さんのバトーと山寺(宏一)さんのトグサに付いていけばいいんだなと思って演じました。山寺さんが後ろで聞いているときに、『目を閉じるとアニメーションが浮かんでくる』と言ってくださったことがとてもうれしかったです。これも、私が20数年仕事をやり続けて来たことへの神様からのご褒美なのかなという感じがします(笑)」
-声優さんにとっても当たり役が一つあるというのは大きいんですね。
田中:「そうですね!幸運だったとしか言いようがありません。今回はそんな中から4作品も放送していただけるということですが、役柄だけでなく、20年以上の私自身の歴史も合わせて楽しんでいただけたら、『吹替王国』で取り上げていただく価値があるのかな~と思います(笑)」
PROFILE
●たなかあつこ
11月14日生まれ、群馬県出身。ニコール・キッドマンを始め、グウィネス・パルトロー、ケイト・ベッキンセール、モニカ・ベルッチなど数多くの女優の声を吹き替えている。「攻殻機動隊」シリーズでは、劇場版アニメ、テレビアニメ、ハリウッド実写版などで草薙素子を演じている。現在は海外ドラマ『エレメンタリー ホームズ&ワトソンin NY』のジョーン・ワトソン(ルーシー・リュー)の吹き替えを担当している
写真は『GHOST IN THE SHLL/攻殻機動隊2.0』
©1995・2008 士郎正宗/講談社・バンダイビジュアル・MANGA ENTERTAINMENT
※この記事はヨムミル!ONLINEの転載になります。
放送情報
吹替王国 #12 声優:田中敦子
放送日時:2017年12月23日(土)13:00~
チャンネル:ムービープラス
番組説明:
ムービープラスの人気企画「吹替王国」の第12弾が放送。企画初の女性声優・田中敦子さんが登場。今回の吹替王国では田中さんの代表作「攻殻機動隊」の劇場版『GHOST IN THE SHLL/攻殻機動隊2.0』のほか、ケイト・ベッキンセールを演じた『ミラクル・ニール!』『リーガル・マインド~裏切りの法廷~』など、計4作品を放送。
2017年12月23日(土・祝)
13:00~『リーガル・マインド~裏切りの法廷~【日本語吹替版】』
15:00~『GHOST IN THE SHLL/攻殻機動隊2.0』
16:45~『ミラクル・ニール!【日本語吹替版】』
18:30~『インビジブル【地上波吹替版】』
※放送スケジュールは変更になる場合がございます。
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