若き真田広之が躍動し、渡辺典子と共演した映画「伊賀忍法帖」

「伊賀忍法帖」は、山田風太郎による長編小説で、伊賀忍者たちの奇想天外な活躍を描いた時代小説の傑作だ。1982年に映画化されているが、山田風太郎原作の映画化と言えば、その前年に公開された「魔界転生」が有名。客動員数200万人超、配給収入10億円超を記録した大ヒット作だった。

(C)KADOKAWA 1982

そのヒットを見て、映画界の風雲児だった角川春樹が製作を手掛けたのが、「伊賀忍法帖」だった。主演には、まだ若手だった真田広之を据え、薬師丸ひろ子、原田知世と並び"角川三人娘"と称された渡辺典子をヒロインに抜擢。真田が所属し、千葉真一が率いるJAC(ジャパンアクションクラブ)が躍動するドラマ「影の軍団」(フジテレビ系)が大ヒットしていたこともあり、公開前から大きな話題を呼んでいた。

時は戦国時代。松永弾正(中尾彬)は、三好氏の美姫・右京太夫(渡辺典子)をわがものにしようと企み、果心居士(成田三樹夫)が操る5人の妖術僧に媚薬を作るよう依頼した。妖術僧たちは伊賀忍者の笛吹城太郎(真田広之)の恋人・篝火(かがりび・渡辺の二役)を捕える。弾正の愛人・漁火(美保純)と首をすげ替えられた篝火は、自身の涙から作られた媚薬を持って城太郎のもとに逃亡し、媚薬を彼に渡して絶命。城太郎は復讐を心に誓う。直後、弾正と一味は東大寺の大仏殿に火を放ち、右京太夫を連れ去った...。

あらすじを紹介するだけでも、山田風太郎作品らしい怪しげな世界観が浮かび上がってくる。本作の魅力は、まず主演の真田広之のカッコ良さだ。美しく精悍な顔立ちで、JACで鍛えられているだけに殺陣やアクションはお手のもの。ただ、柳生新左衛門役で共演している千葉真一とは違った、荒削りさが感じられるも、それが城太郎を演じる上での持ち味にもなっていた。

(C)KADOKAWA 1982

渡辺典子の魅力も捨てがたい。本作においては、「角川映画大型新人女優コンテスト」が開催され、応募総数5万7480人を勝ち抜いて、ヒロインの座を射止めたシンデレラガール。新人ながら一人三役に挑んでいる。まだ若さが垣間見えるものの、画面映えする美貌と存在感は、さすがに光るものがあった。

千葉真一をはじめとする共演者も曲者ぞろい。中尾と成田の悪役コンビは存在感抜群だし、妖術僧たちの顔ぶれが出色だ。まずは、頭目の羅刹坊(らせつぼう)を演じた風祭ゆき。日活ロマンポルノの黄金期を支えた美貌の女優で、後に演技派女優に転身。角川映画の常連となったが、本作においての妖艶さは実に魅力的だ。

怪力の巨漢・金剛坊役ではプロレスラーのストロング小林が起用された。彼はこの役をいたく気に入り、以降は「ストロング金剛」と改名したほどだ。さらに、粘液を吐いて窒息死させる水呪坊を佐藤蛾二郎、盲目で針を武器とする破軍坊に浜田晃、死者を復活させる虚空坊を福本清三が演じている。浜田は「仮面ライダーストロンガー」の怪紳士・タイタン役が有名で、福本は「日本最高の斬られ役」とも称された時代劇の名バイプレーヤーだ。

そんな曲者俳優たちが脇を固める中で、若き真田広之が奮闘する本作。後にスターの座を駆け上がっていく真田の芽吹きを感じさせる場面も数多い。また、東大寺大仏殿に火が放たれるシーンには美術費1億5000万円が投入され、実物大の大仏セットなど、当時の角川映画らしい大規模で豪華なセットで迫力満点の大作に仕上がっている。

見どころ満載の映画「伊賀忍法帖」が、WOWOWプラスで放送される。映画に勢いがあったよき時代の良作として、一見の価値ありだ。

文=渡辺敏樹

この記事の全ての画像を見る

放送情報

伊賀忍法帖
放送日時:2023年1月5日(木)7:10~ ほか
チャンネル:WOWOWプラス
※放送スケジュールは変更になる場合があります

詳しくはこちら

キャンペーンバナー

関連記事

記事の画像

記事に関するワード

関連人物