石川演じる真衣子は、里親の元で他の里子たちを姉として面倒を見つつ、絵本作家になる夢を抱いているのだが、美術教師に紹介してもらった編集者に作品を見せると、辛辣な意見を放たれ挫折してしまう。家庭での"お姉さん"ではなく、一人の17歳の少女として落ち込んでふさぎ込む様子を、当時同世代の石川はリアルに表現。普段の明るさから生まれるギャップも鮮明に表しているところに、石川自身の"アイドルではない普通の女の子らしさ"が垣間見える。その後、実の父親が現れたことで見せる表情などにも"普通の女の子らしさ"が満載となっている。
一方、藤本演じる理沙は、娘よりも恋人を優先してしまう母親に嫌気が差しており、常に不満を募らせている。その"やさぐれ感"が異様にフィットしており、藤本の気の強さと理沙のクールで一匹狼的な孤高さがマッチ。同作が映画初出演の藤本にとって、芝居を超えて自身の内側から引き出したであろう魂の表現が、理沙の悲しみや絶望感を鮮明に描き出しているといえる。中でも、母親を恨み切れない優しさなどは、藤本だからこそできる表現が詰まっている。
せりふ回し、間の取り方、細かい所作など、芝居のテクニックに関しては十全ではないが、だからこそフレッシュさが際立ち、それゆえに表れる表現がある。その表現は演者の人間性から出たもので、リアルな説得力を孕んでおり、当時の2人だからこそ出せたものだ。
17歳の少女2人がそれぞれに抱える悩みをどう乗り越えていくかという展開と共に、トップアイドルだった2人が見せるフレッシュな演技の中に凝縮された人間性にも注目してほしい。
文=原田健
放送情報
17才 旅立ちのふたり
放送日時:2023年2月8日(水)20:00~
チャンネル:東映チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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