美輪明宏が映画「黒薔薇の館」で表現する神性と人間性の切り替えと「愛とは?」の答え

『黒薔薇の館』©1969 松竹株式会社

もちろん、芝居も素晴らしい。神性なる佇まいを損なわないように細部までこだわりの詰まった言動やけっして焦らない落ち着き、動じなさなどは特筆すべき点だ。同じ場所、同じ時間の中で、大勢で芝居をする場合、どうしても周りのスピードに合わせてしまう。それが自然で当たり前であるし、一人だけスピード感が違うとちぐはぐになってしまい悪目立ちしてしまう。しかしながら、丸山は自然と竜子の周りだけ時間の進む速さが違うような動きで、"同じ場所にいるはずなのにそうは見えない"という効果をもたらす芝居を披露。特に動きに関しては、常にダンスを踊っているかのような流麗な動きで、男につかみかかられるようなシーンでは美しくいなすことで竜子の謎めいた部分を表現している。

だが、この作品での丸山の本当の"凄さ"は前述した神性ではなく、"人外が人になるさま"をしっかりと表現していることだ。

『黒薔薇の館』©1969 松竹株式会社

妖艶で謎めいた魅力で男たちを虜にする竜子だが、誰にも心を許さない。それは、彼女が"絶対の愛"を求め続ける求道者であるから。そんな中、佐光の次男・亘(田村正和)と出会った竜子は、命を投げうってでも手に入れたい"絶対の愛"を見つけてしまう。

この瞬間、丸山が演じる"人外"は"人"となり、急に生気を帯び始め、気品の高さは人間らしさへと変化する。その切り替わりによって、作品のテーマである「愛とは何か?」という答えを浮き彫りにしてくれている。この作品を通して、俳優としての美輪明宏の存在感と表現力に魅せられてみてはいかがだろうか。

文=原田健

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放送情報

黒薔薇の館
放送日時: 2023年2月2日(木)19:15~
チャンネル:衛星劇場

黒蜥蜴
放送日時: 2023年2月1日(水)8:30~
チャンネル:衛星劇場
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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