受け身な主人公を演じる黒木華がだんだんと開放的に!綾野剛の胡散臭さもクセになる映画「リップヴァンウィンクルの花嫁 complete edition」

黒木華主演で2016年に公開された映画が「リップヴァンウィンクルの花嫁」。監督、脚本は「スワロウテイル」、「花とアリス」、「リリイ・シュシュのすべて」、「ラストレター」などを手がけ、独自の映像美と世界観が海外でも支持されている岩井俊二。岩井が黒木に出会い、イマジネーションを膨らませて制作された本作を監督自らが再編集した4時間超えの完全版「リップヴァンウィンクルの花嫁 complete edition」が日本映画専門チャンネルで2月1日(水)より放送される。

黒木が演じているのは臨時教師をしながらバイトをし、堅実な生活を送っていた皆川七海。臨時教師の職を無くし、SNSで知り合った教師の鉄也と結婚することになるものの、SNSを通じて紹介された"なんでも屋"の安室(綾野剛)に結婚式の代理出席を頼んだことが引き金となり、離婚を言い渡され、家を追い出されてしまう。何もかも失った七海が助けを求める相手はどんな時も駆けつけてくれる風変わりな安室のみ。息苦しい現実という世界から追い出されたような不思議な経験をする主人公を演じた黒木は岩井監督の作品のファンだったというだけあり、どこか宙に浮いているような雰囲気を醸し出す七海を見事に演じ、綾野はなんでも屋兼俳優の安室の胡散臭さをその持ち味で体現している。

■メイド姿やウエディングドレス姿も話題となった黒木華の魅力

中学校で生徒に嫌がらせをされても、理不尽な想いをしても決して怒らない受け身型の七海は、その性格ゆえ、予想もしない事態に巻き込まれていく。七海の夫が自分の恋人と浮気していると告げに、見知らぬ男が突然家を訪ねてきた時には、あまりの押しの強さに部屋の中に入れてしまい、浮気相手が元教え子だと聞かされた時も、思わず「あっちゃー!」と場違いなことを言ってしまう。

義母に結婚式でついた嘘や浮気の濡れ衣を着せられ責められた時もタイミング悪くしゃっくりが止まらなくなり、愛想をつかされる。ネットの中や不登校になった女子生徒とのオンライン授業では解放されているように見える七海はおっとりしていて無防備。行き場をなくし、安室にバイトを紹介され、気がついたら結婚式場で自分が偽親族になっているという展開もシニカルだが、自由奔放な真白(Cocco)との縁で、七海は豪邸で真白と暮らし、メイドとして働くことになる。自分がなく流されるままに生きてきた七海が常識というレールから外れ、徐々に解放されていく様を黒木が表情豊かに表現。困惑する顔、ウエディングドレスを着た美しい横顔、泣き叫ぶ顔、無邪気に笑う顔。どれも魅力的だ。強烈な個性を放つCoccoとの共演も話題を呼んだ。

■主人公にとってはある意味ヒーロー(?)の綾野剛演じる曲者

七海から助けを求められると即座に解決策を提示し、依頼料を聞いて困った顔をする彼女に安くしておくといい、「"ランバラル"("クラムボン"というハンドルネームを持つ七海がSNS上で知り合った人物)の友達ですから」と付け加えるのが安室の口癖。緊急事態が起こっても、基本、取り乱さず「大丈夫ですよ」と七海の心を落ち着かせる。いかにも怪しげな男が何か企んでいることに観客が気づくストーリー運びとなっているが、"ホントはいい人なのかもしれない"と少しだけ思わせてしまうところは綾野の温度感と軽みのある芝居あってこそだろう。いつも淡々としている安室が後半で七海と一緒に真白の母親を訪ね、いきなり号泣する衝撃的なシーンはさまざまな憶測を呼ぶことになった。岩井俊二監督の映像の中で生きる黒木と綾野の演技に目を奪われる。

文=山本弘子

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放送情報

リップヴァンウィンクルの花嫁 complete edition

放送日時: 2023年2月1日(水)07:00~
チャンネル:日本映画専門チャンネル

※放送スケジュールは変更になる場合があります

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