お金にがめつい性悪女...でも、豊かな表情にやられる！石原さとみの演技が秀逸な謎解きコメディ「パズル」

2003～2004年に放送されたNHKの連続テレビ小説「てるてる家族」に出演したことがきっかけでブレイクした石原さとみ。以降、数多くのドラマやCM、映画に出演し、特に近年のドラマにおいては安定した視聴率をマークするなど、「連ドラの女王」と呼ばれるほどの活躍を見せている。

そんな石原が主演したドラマの中でも特にユニークな作品が、2008年に放送された「パズル」だ。シナリオはミステリーの名作ドラマ「トリック」の蒔田光治氏によるオリジナルストーリーで、宝探しと殺人事件の解明をメインとしたコメディタッチの謎解きドラマとなっている。

石原が演じるのは、主人公の英語教師・鮎川美沙子。この鮎川がクセもので、表向きは清楚で、真面目で、生徒思いの教師。しかしその本性は金や食べ物にがめつく、宝探しに目がないという性悪女。「私語は厳禁　質問も厳禁　付け届けは現金で」を教育方針としていることからも、自己中で金に執着するキャラクターであることがわかる。

鮎川は病気で休むことになった教師の代わりとして、近松大学付属辯秀高等学校に赴任する。今村真一（山本裕典）、神崎明（木村了）、塚本善雄（永山絢斗）ら、3人組の生徒が挑戦しようとしている宝探しや推理イベントに無理やり同行し、謎解きに夢中になっているうちに殺人事件に巻き込まれてしまう...。

この作品で注目したいのが、石原の表情の豊かさだ。清楚さとがめつさという二面性を持つ鮎川役だけに、石原の表情も千変万化、くるくると変化して実に楽しいのだ。

例えばオープニングで3人組と出会い、校長室に案内してもらう時は、丁寧で大人しく、おまけに美人のためとても魅力的に映る。しかし本性を現し3人組を責める時は「嘘つけ！」とドスの聞いた声で罵るなど、清楚な姿など跡形もなくふっ飛ぶほどの豹変ぶり。

宝探しや殺人事件に関わるシーンでは、特にその表情が活きてくる。3人組が持て余す暗号を一瞬で解き、宝探しに乗り出す時のハツラツとした笑顔。殺人犯の疑いがかけられた生徒に「必ずあなたの疑い、晴らしてみせるから」と言った時の頼りがいのある口調と眼差し。また暗号を先に解かれて負け惜しみを言う生徒を嘲笑する表情。さらに洞窟が崩れて閉じ込められた時の慌てっぷりと絶叫には、ヘタレなのだが憎めない雰囲気がたっぷりだ。

事件に巻き込まれ命を落とすような目にあっても、次のエピソードではまたお宝や賞金に目がくらみ、夢見るような笑顔を見せる鮎川美沙子。欲深く、お宝に対してタフであり、しかしピンチではヘタレな鮎川が性格の悪い女性ながらも可愛く魅力的に映るのは、やはり石原が持つ美しさと、イキイキとした豊かな表情によるものだろう。

演技だけでなく、鮎川と3人組との掛け合いも何度も吹き出すほどユニークだし、就寝時にナイトキャップを被って寝たり、クイズの回答権を得るために鼻血を出すほどエキサイトしたりと、思わずクスッと笑ってしまうシーンもたくさんある。サスペンスでありながら気軽に楽しめるこのドラマで、石原さとみとともに宝探しと殺人事件の犯人解明に挑んでみてはいかがだろうか。

文＝堀慎二郎

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