天才子役から実力派俳優へと成長し、数々の映画やドラマ、舞台、CMなどに出演する神木隆之介。キャラクターの濃い役からどこにでもいるような普通の男性の役まで幅広い役柄を変幻自在に演じ分け、さらには声優としても高い評価を得ている。そんな華やかな経歴の中でも、特に異色な作品がドラマ「神木隆之介の撮休」だ。神木はこの作品で、役者としての柔軟性を大いに披露している。
同ドラマは、「神木隆之介が突然の撮休にどう過ごすのか」をテーマに、各話を担当する監督がそれぞれ描くというチャレンジングな全8話のオムニバスドラマ。瀬々敬久や森ガキ侑大、三宅唱、天野千尋、枝優花といったそうそうたる監督陣がそれぞれの切り口で俳優・神木隆之介の新しい一面にスポットを当てる。神木は初めて作中で本人役を演じ、主演を務める。
この作品の面白いところは監督ごとに描き出される全く異なる世界観の中を、神木がどう生きるか、ということに尽きるのだが、神木は一貫して本人として作品の中に在りながらも、各監督との化学反応により、全ての回で違った見せ方を披露。その柔軟性たるや、恐ろしさすら感じてしまうほど。
というのも、物語によっては虚構と現実が入り混じったような話だったり、ホラーっぽい展開、現実的な人情物語、売れっ子役者としての内省に切り込んだ話、社会生活の中でよくあるような「あるある」な話など、8話全てのパターンが違う中で、しっかりと自分自身を演じながらも、監督の作風に合わせて変化して対応している。
同じ「神木隆之介」でありながらも、各話の「神木隆之介」はしっかりと違っており、その変化は微に入り細を穿っている。これは、彼自身の芝居の引き出しの多さだけではなく、監督の演出に身を任せて演じることで引き出される新しい自分の発見を自らが楽しんでいるからであろう。口調、目の輝き、立ち姿勢、細かな動きや纏うオーラまでもが変化することができるというのは、変化を楽しむマインドと変化しても芝居が崩れない演技力があってこその「柔軟性」を有しているからに他ならない。
さらに言えば、第1話と第5話を三宅監督、第2話と第8話を瀬々監督、第3話と第6話を森ガキ監督というふうに同じ監督が担当する回でも、しっかりと変化を見せている。これは、監督との化学反応ではなく、監督が作る世界観と化学反応しているということの現れで、神木の持つ感性の鋭さを立証しているといえる。
30分という短い時間の中で「神木隆之介」で遊ぶ監督たちのクリエイティブな「大人の遊び」を楽しみながら、その世界の中で変化し対応して、新しい自分を表現する神木の役者としての柔軟性にも注目してほしい。
文=原田健
放送情報
神木隆之介の撮休
放送日時:2023年2月20日(月)15:00~
チャンネル:WOWOWプライム
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
詳しくはこちら