長澤まさみが変幻自在の詐欺師を演じる「コンフィデンスマンJP」シリーズが愛される理由

2022年10月から12月にかけて放送されたテレビドラマ「エルピス-希望、あるいは災い-」や、2023年3月公開予定の映画「ロストケア」など、ここ数カ月は骨太の社会派作品が続いている女優の長澤まさみ。胸に迫るようなシリアスな演技から、胸を焦がすようなラブストーリー、変顔上等なコメディ、さらにはクールに決めるアクションに至るまで、女優としての振り幅の広さが印象的だが、それゆえに彼女が新作を発表すると、ニュースには「新境地」という言葉が躍る機会が多いように思われる。それだけ観客が、彼女の新作に触れるたびに驚き、かつ楽しんでいるという証であろう。

「目に見えるものが真実とは限らない。何が本当で何が嘘か。コンフィデンスマンの世界へようこそ」という口上から始まる「コンフィデンスマンJP」シリーズも、「長澤まさみの新境地」と観客を驚かせた1本だ。2023年2月には、2019年に放送されたフジテレビ開局60周年スペシャルドラマ「コンフィデンスマンJP 運勢編」がフジテレビTWOにて放送される。連ドラ、第1弾映画に連なるエピソードとなる同作は「運勢」がテーマで、北村一輝、広末涼子、中山美穂らがゲストで参加している。

人気脚本家・古沢良太が脚本を手がける本作の主人公・ダー子(長澤まさみ)は年齢不詳、正体不明、とにかく規格外で無軌道な詐欺師。都内の高級ホテルのスイートルームに居を構え、真面目で小心者のボクちゃん(東出昌大)と、百戦錬磨のベテラン・リチャード(小日向文世)とともに、壮大かつ奇想天外な計画で、欲望にまみれた数多くの悪人たちから大金を騙しとってきた。そんなダー子たちの前に、「まわりの運気を吸い取る強運の持ち主」と言われる裏社会の顔役・阿久津(北村一輝)が現れたことで、それまで「超絶怒濤のラッキーガール」だったダー子の運気は一気に下がりはじめる――。

ダー子といえば、相手を騙すためにあらゆる職業の専門知識を短期間でマスターし、どんな職業にも成りすます「七変化」が特徴。本作劇中でも「宇宙開発技術者」「中古車販売店員」「選挙事務所スタッフ」「不動産スタッフ」に成りすましたほか、さらには往年の人気番組「ザ・ベストテン」司会時の黒柳徹子のコスプレや、サンシャイン池崎やムツゴロウさんのモノマネなども披露。まさに長澤まさみという女優の引き出しの多さを感じさせる。パワフルで、変顔も辞さない破天荒さが魅力のダー子だが、長澤自身はダー子を演じる際には「バカバカしいことほど真剣に」ということを心掛けてきたという。

お金とファッションとおいしい食べ物に目がないダー子は、ハイテンションで、予測不能な行動が魅力のキャラクター。時には味方までをも欺きながらも、アッと驚くような華麗な手口で、おサカナちゃん(詐欺のターゲット)たちを欺いていく。真剣な話をしていたかと思ったら、最後の方ではついついふざけてしまう。本心をなかなか明かさないが、心の奥底には愛情や優しさが見え隠れしている。

「目に見えるものが真実とは限らない」という言葉通り、予想外の行動で観客をアッと驚かせ続けてきたダー子だが、そんなダー子が観客の心をしっかりと掴んで離さないのは、自身も"新境地"を更新し続ける長澤まさみならではだろう。

文＝壬生智裕

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