"目ヂカラ"の強い眞栄田郷敦が社会派ドラマ「エルピス-希望、あるいは災い-」で見せた迫真の演技に注目

主人公は長澤まさみ演じる浅川恵那。東京キー局のアナウンサーである彼女がニュース番組から左遷され、深夜の情報番組で腫れ物扱いされていたとき、若手ディレクターの岸本拓朗(眞栄田郷敦)から、連続少女殺人事件の犯人として死刑判決を受けた男は無実ではないかという相談を持ちかけられる。警察などによる冤罪を暴きたいという拓朗に、恵那は二の足を踏むが、やがて冤罪を確信し、アナウンサー生命をかけてこの問題をテレビで報道しようとする。決して強いだけではなく、元恋人の斎藤正一(鈴木亮平)とヨリを戻してしまったり、ニュース番組に復帰すると立場を守ろうとしたりもする恵那を、長澤はリアルな人間として体現している。

長澤まさみ、鈴木亮平という連続ドラマの主演も多数ある2人を相手に、メインキャストに抜擢された眞栄田郷敦。父は千葉真一、兄は新田真剣佑という家族構成で、もともと注目度の高い彼だが、2019年に「ノーサイド・ゲーム」でラグビー選手を演じて以来、順調にキャリアを重ね、「プロミス・シンデレラ」では二階堂ふみ演じるヒロインの相手役である高校生、「カナカナ」では元ヤンキーの青年を演じた。そして「エルピス」では、脚本の渡辺が "目ヂカラ"のある役者を捜しており、拓朗役に眞栄田がキャスティングされる運びとなった。

物語前半の拓朗は、坊っちゃん育ちで無責任。仕事への情熱もなく、とにかく自分が快適に生きられればいいと考えていた。だが、冤罪疑惑を追ううちに、学生時代に同級生がひどいいじめにあい助けを求められたが何もできなかったことを思い出し、正義感に火が点いて、忖度と保身に走るテレビ局の上層部に反旗を翻す。その前半と後半のギャップが良い。後半、取材で強引なやり方をしたためにクビになり、一介のジャーナリストとなるのだが、そのときの髭をたくわえたやさぐれ感も魅力的だ。拓朗はテレビ局を都合良く利用して人の命すら奪う政治の闇を知る。最終話で恵那と本音をぶつけ合い、「(権力に)こてんぱんに負けました」と言いながら涙する眞栄田の演技は真に迫っていて、見る者の胸を打つ。

クランクアップ時には「本当に自分の力量以上のものを、皆さんに引き出していただいた」と感謝のコメントをしていた眞栄田郷敦。「エルピス」との出会いがあって急成長した彼が、次にどんな演技を見せてくれるか、楽しみだ。

文=小田慶子

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放送情報

エルピス-希望、-あるいは災い-(全10話)
放送日時:2023年4月15日(土)14:00~
チャンネル:日本映画専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合がございます

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