二代将軍・徳川秀忠の急死により、後継を巡って、秀忠の息子である兄の家光派と弟の忠長派が対立すると、家光の剣術指南役である柳生宗矩(山村聰)は長男の十兵衛(千葉真一)を呼び寄せ、柳生一族は家光派に加勢。忠長派との激闘を制し、家光は三代将軍に就任する。映画では家光派が勝利するまでの戦いが描かれたため、以降の展開はドラマのオリジナルだ。
十兵衛や宗矩らの力を恐れた松平伊豆守(高橋悦史)は、保身のために宗矩を要職に就けなかった。一方、家光・忠長の争いで漁夫の利を図った烏丸少将(成田三樹夫)は、倒幕を目指して暗躍。さらに豊臣の遺臣や反幕府勢力の浪人衆などの敵たちが幕府に戦いを挑んでくる中で、伊豆守は十兵衛や宗矩を再利用。十兵衛と配下の裏柳生衆たちは、強敵たちをなぎ倒していくが、十兵衛は次第に幕府への不信感を抱く。やがては十兵衛と宗矩の関係にも歪みが生じ、2人は対立するようになるのだが...。
39話の長いストーリーだが、要所にヤマが設けられて豪華なゲスト俳優陣も頻繁に登場するため、視聴者をまったく飽きさせない展開が素晴らしい。映画にも出演した丹波哲郎、梅津栄、金子信雄、工藤堅太郎らが異なった役で登場するほか、多岐川裕美、山城新伍、小池朝雄、小林稔侍、峰岸徹、石橋蓮司といった昭和を代表する俳優たちが顔を見せてくれる。レギュラー陣では、徳川家光役の田村亮、徳川忠長役の西田健がともに好演。
映画で家光を演じた松方弘樹に代わり、弟の目黒祐樹が柳生左門友矩(十兵衛の弟)を演じているのも面白い。ちなみに千葉の実弟である矢吹二朗が演じているのは、裏柳生衆の首領・フチカリ役。得意のアクションだけでなく、本作では演技にも非凡なところを見せており、特に物語後半の存在感は抜群だ。志穂美悦子も好演している。後半で宗矩と十兵衛が対立すると、両者の板挟みとなって悩み抜くのだが、そのあたりの女性特有の感情を抑えた演技で巧みに表現してくれた。
ただ、本作の見どころはやっぱり千葉真一に尽きるといってもいいだろう。眼帯姿の凛々しさと力強いセリフ回し、もちろん殺陣の見事さは圧倒的だ。撮影当時は39~40歳で俳優として脂が乗った時期で、柳生十兵衛役は以降も千葉の当たり役として複数の作品を生み出したが、まさに彼の俳優人生の中でも外すことのできない役となった。
千葉真一ファンはもちろん、全時代劇ファン必見のドラマ「柳生一族の陰謀」が時代劇専門チャンネルで6月2日(金)より放送される。今は亡き千葉真一の勇姿が見れる1作として、ぜひ多くの人の目に焼き付けてほしいと願う。
文=渡辺敏樹
放送情報
柳生一族の陰謀
放送日時:6月2日(金)2:00~ほか
※毎週(月)~(金)2話連続放送
放送チャンネル:時代劇専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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