漫画原作の実写化は成功が難しいとも言われているが、その中でも本作は成功例として原作ファンからも支持を集めた。成功の理由は、原作に沿った内容、バッチリとハマったキャスティングなど、製作陣がしっかりと原作に敬意を表していたからこそ。
「泣き虫のヒーロー」タケミチ役に抜擢された北村匠海は、タケミチのがむしゃらさと誠実さを見事に体現。イケメンオーラを封印し、タケミチのヘタレ具合にも説得力がある。ボロボロになればなるほど輝くような底力を放つタケミチとなったが、本作出演後には、北村が所属するバンド「DISH//」のツアー会場に大勢の子どもの姿が見受けられるなど、「東リベ効果」によって北村自身のファン層にも変化が生まれたという。これは彼が、タケミチを血の通った魅力的な人間として表現したからにほかならない。
また東京卍會の伝説の総長・マイキーを演じたのは、吉沢亮。異常な喧嘩の強さと、一瞬にして周囲を惹きつけてしまうカリスマ性を持つマイキーは極めて漫画的なキャラクターだからこそ、原作漫画を楽しんでいる時点では正直「マイキーを実写化するのは無理だろう」と思っていた。しかし、吉沢扮するマイキーがお目見えするやその予想はいい意味で裏切られ、「マイキーが動いている!」と胸が高鳴ると同時に、吉沢はカリスマ性をにじませることができる稀有な俳優だと改めて実感した。
そして東京卍會の副総長でマイキーを支えるドラケンを演じる山田裕貴は、どっしりとした重厚感も役そのもの。放送中のドラマ「ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と」もそうだが、山田は、無愛想に見えながら、隠しきれない優しさが見え隠れするような役柄がよく似合う。そのほか、今田美桜、杉野遥亮、鈴木伸之、磯村勇斗、間宮祥太朗、眞栄田郷敦、清水尋也など、人気と実力を兼ね備えた若手俳優陣がズラリと顔をそろえ、それぞれがすばらしい熱演を見せている。イベントで北村は「この仲間たちは誇りに思える人」と、同世代の仲間から刺激や喜びを受け取っていることを明かしていた。お互いに着火し合いながら、限界を突破していくような撮影を経たことで、その熱気が確実にスクリーンにも映しだされている。
メガホンをとったのは、『映画 賭ケグルイ』(2019年)や『映像研には手を出すな!』(2020年)など漫画原作の実写化、そして若手キャストの演出に定評のある英勉監督。『映画 賭ケグルイ』では、浜辺美波や高杉真宙、福原遥らがイメージを覆すようなぶっ飛んだ表情を披露していたことも印象深い。英監督とタッグを組んだ俳優にインタビューをすると、「英監督は『もっと飛べる。飛んじゃいな』という力を注いでくれる」と口にすることもあり、思い切り暴れられるのが英組の現場である様子。次々と激しいぶつかり合いが巻き起こる『東京リベンジャーズ』の監督として白羽の矢が立ったのも納得だ。
青春、サスペンス、ラブ、アクションなど、どの角度から見ても心揺さぶられる本作だが、英監督がそれらをバランスよくまとめ上げただけではなく、若手キャスト陣からあふれ出す気迫までをしっかりと捉えている。信頼を寄せ合うキャスト陣が同時代に活躍し、彼らが本作に集まったことは、まるで奇跡のよう。熱さも迫力もさらにパワーアップした劇場版最新作を鑑賞する前に、まずはその始まりをチェックしよう。
文=成田おり枝
成田おり枝●映画ライター。大学卒業後、シネコン、ミニシアターでの劇場経験を経て、映画サイトの編集者へと転身。 現在はフリーライターとして映画、アニメ、ドラマを中心に、インタビューやコラムなど日々の取材に奔走中。
放送情報
東京リベンジャーズ
放送日時:2023年6月24日(土)21:00~
チャンネル:チャンネルNECO
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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