配属先の音楽隊でも次々と敵を作ってしまう成瀬が交流を重ねるのが、トランペット担当の交通課の来島春子(清野)だ。音大を卒業し、自ら音楽隊を志望した来島は、音楽隊を見下すような成瀬に嫌悪感を抱いていたが、人間的な一面を目の当たりにし次第にほだされていく。来島の成瀬に対する感情の移ろいを、清野は眼差しの変化で巧みに表現している。
来島は、夫と別居し、幼い息子を一人で育てる母親でもあり、仕事も子育てもやりたいことをこなそうとするも、甘くない現実に葛藤する。子どもに向ける笑顔から悩みを吐き出す弱気な顔まで、清野は多彩な表情で来島の等身大な一面を体現。またトランペットも実際に吹き替えなしで演奏しており、3ヶ月の猛特訓の末、見事な音色を響かせている。
同じく吹き替えなしでの演奏に挑んだのが、サックスを担当する北村裕司役の高杉真宙。元刑事志望の北村は、音楽に関してはてんでやる気もなく練習中にもあくびを連発するほど無気力だが、成瀬に触発され情熱を帯びていくキャラクターだ。
口角を片方だけ上げた不器用な笑顔など、高杉は無骨な男をチャーミングに演じており、「宝島」の演奏でソロパートを成功させた時の清々しい顔がなんとも印象的。このソロパート、元々は寄りのショットは予定されていなかったそうだが、高杉の成長が著しかったため、急遽追加されたそう。思わず気持ちがあふれたというリアルな表情には心を揺さぶられることだろう。
阿部演じる主人公はもちろん、その周囲の人々の表情からも成瀬の成長を描いていく「異動辞令は音楽隊!」。引力のあるキャラクターを支える重要な役どころで見せる若手俳優たちのいぶし銀な演技からは、彼らの実力の高さを存分に感じることができるはずだ。
文=HOMINIS編集部
放送情報
異動辞令は音楽隊!
放送日時:2023年7月8日(土)20:00~
チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります
詳しくはこちら