「ガリレオ」シリーズ最新作「沈黙のパレード」で福山雅治柴咲コウらが見せた"達人の技の応酬"のような感情表現

「沈黙のパレード」に出演する福山雅治、柴咲コウ、北村一輝
「沈黙のパレード」に出演する福山雅治、柴咲コウ、北村一輝

(C)2022 フジテレビジョン アミューズ 文藝春秋 FNS27社

ある地方都市の町の人気娘・佐織(川床明日香)が突然行方不明になり、数年後に遺体となって発見された。容疑者として、かつて草薙刑事(北村一輝)が担当した少女殺害事件で黙秘を貫き無罪となった蓮沼(村上淳)が浮上するが、今回も同様に完全黙秘を貫き、証拠不十分で釈放されてしまう。その後、蓮沼が堂々と遺族たちの前に現れたことで、町全体を憎悪と義憤の空気が覆う。そんな中、かつて佐織が町中を熱狂させた秋祭りの時期がやってくる。祭りのパレード当日、蓮沼が遺体で発見される...。

容疑者は佐織を愛した普通の人々で、彼ら"哀しい復讐者"たちの渾身のトリックを、湯川、草薙、内海らが解き明かしていくのだが、復讐者たちの心情ややりきれなさ、深い悲しみに迫っていくうちに、湯川らも人としての感情に振り回されていく。トリックを解き明かしていくほど悲しい真実が見えてくるという、息をするのも忘れるくらいの展開もさることながら、特筆すべきは行間の感情表現のすばらしさだ。

(C)2022 フジテレビジョン アミューズ 文藝春秋 FNS27社

「目は口程に物を言う」というが、まさにこれを地でいくように、登場人物たちはセリフとセリフの間、セリフのない部分での表現で、感情を雄弁に語っている。例えば、内海が湯川に事件の詳細を説明しているシーンで、聞いているのか聞いていないのかよく分からない湯川を、説明しながら怪訝な表情で見つめたり、湯川が内海の前で自分の考えを語りながらも本心までは話さなかったりと、多くを語らないためにセリフの数が少ない湯川だけでなく、そんな湯川を相手にしている内海においても、セリフの行間に意味が込められており、発言とは裏腹な本心をも描くことで、よりリアルな人間性を描いて見応えのあるものにしている。捜査の合間や推理を語る場面においても、話している内容と並行して何を考えているのかまでも追ってしまうため、より没入感があるし、単調なシーンにならない。

そして何より、それらをしっかりと表現する役者陣の演技力にはただただ感心させられてしまう。観ているだけだと、普通に演じているようにも見えるため見逃してしまいがちだが、よく考えれば同時に2つの演技をしているようなもので、簡単な掛け合いのシーンも"武道の達人同士によるハイレベルな技の応酬"なのだ。しかも、それを自然に見えるように演じているというところに舌を巻く。こんな"達人の技の応酬"で紡がれるシーンが積み重なった作品が面白くないわけがない。

東野作品の魅力を堪能しつつ、役者陣が表す"達人レベル"の感情表現にも注目してみてほしい。

文=原田健

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放送情報

沈黙のパレード
放送日時:2023年7月22日(土)20:00~
チャンネル:WOWOWシネマ

放送日時:2023年7月23日(日)14:00~
チャンネル:WOWOWプライム

※放送スケジュールは変更になる場合がございます

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