これがもし若者の恋愛模様を描いた作品であれば、洋子はすぐにでも聡史のもとに飛び込むに違いない。しかし、社会的立場と責任のある大人であればこそ、どこかで理性が働き、責任のある行動を取ろうとするもの。作中で洋子が見せる戸惑いも、理想と現実の狭間で揺れ動いているからこそだ。そんな洋子の複雑な心情を表情やセリフのニュアンスでリアリティーたっぷりに演じる石田の演技は、見事というほかないだろう。
その後、互いの気持ちを受け入れようとした聡史と洋子だったが、あることをきっかけに2人の運命は大きくすれ違い、別々の道を歩むことに。それから4年後。すれ違いの真相を知った聡史と洋子が後悔の念にさいなまれる様を迫真の演技で見せるシーンは本作における1番の見所だ。時間にすればわずか5分ほど。しかし、身近な人間に裏切られたことへの深い怒りと悲しみ、相手への懺悔の気持ちが痛いほど伝わり、作品に感情移入させるには十分すぎる時間だ。
6年間にわたって続いたすれ違いの果てに2人がたどり着いた未来とは。洋子を演じた石田が、「こんなふうに人を愛せたら。そう思わずにはいられなかった」と振り返った大人のラブストーリーの行く末を見届けてほしい。
文=安藤康之
放送情報【スカパー!】
マチネの終わりに
放送日時:11月2日(木)10:35~ほか
放送チャンネル:日本映画専門チャンネル
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