"できない側"と"したい側"、各役柄を十二分にこなした永山瑛太と岩田剛典の演技に吸い込まれる！ドラマ「あなたがしてくれなくても」

しかし、その演技は秀逸で、自分からみちを求めたものの中断となった時には、ほっとした空気が伝わってくる。実際そのシーンでは、みちがモノローグで「今一瞬ほっとしたの、私分かっちゃったよ」と語るが、それが視聴者にもわかるほどだ。カフェでバイトを始めた謎の女性・三島結衣花（さとうほなみ）がケガをした時はその白い足を握りしめ、危うい眼差しで結衣花を見上げたりと、要所で鋭い演技を見せ、あくまで陽一を好感度低く演じているところに永山の凄さがある。

一方、岩田が演じる誠は真面目で誠実、部下への気遣いもできる理想の男性。帰りの遅い楓のために毎晩夕食を用意したり、結婚記念日には花束を買い、ディナーやホテルも手配するなど、常に楓のことを思っている。岩田持ち前の爽やかな雰囲気もあって、陽一とは逆に好感度高めだ。

しかし、みちが「うち、セックスレスなんですよ」と告白するシーンでは、誠から爽やかさが消え、何か思いを巡らせているような表情となる。橋の上で自分を待つみちを見つけたシーンでは、沈んだ面持ちで口元を一瞬引きつらせたりと、何かを胸に抱えている空気がありありと伝わってくる。誠もみちと同じくセックスレスに悩んでいたためだが、誠の真意が知りたくなり、物語の先が見たくなる演技はさすがと言える。

セックスレスといってもさまざまな形がある。本作ではそれぞれが相手に強い思いを持っているが、"好きなのにしてくれない""好きなのにできない"。そこから生まれた4人の葛藤から、"結婚"や"自分としての生き方"という深い部分まで描き出されているように見えるのは、4人の俳優の演技力があってこそだろう。

物語が進むと、陽一と誠はパートナーへの思いを抱えながらも違う女性へとベクトルを向ける。やがて修羅場が訪れ、佳境へと向かうのだが、それぞれが決着をつける場面では永山が最高の名演技を見せるなど、最後まで目が離せない。永山と岩田、そして奈緒と田中の演技も含めて、ぜひラストまで、じっくりと見てほしい。

文＝堀慎二郎

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