小泉孝太郎の原点を感じさせる「ミステリー作家 朝比奈耕作シリーズ 鳥啼村の惨劇」

小泉孝太郎が主演する人気サスペンスが「ミステリー作家 朝比奈耕作」シリーズ。原作は吉村達也で、TVドラマ版は2016年に第1作「花咲村の惨劇」がTBS系で放送され、2018年には第2作となる「鳥啼村の惨劇」が放送されている。

小説家の朝比奈耕作(小泉孝太郎)は、自著「雉啼島(きじなきじま)の惨劇」のドラマ化のオファーを受けるべく、担当編集者である高林智里(南沢奈央)とともに東京ベイテレビを訪れた。そこで耕作は、ドラマ撮影中に毒殺された俳優・岩下(モロ師岡)の事件を追っていた旧知の刑事・中沢(阿南健治)と偶然出会う。中沢から"鳥啼村(とりなきむら)見聞録"と書かれたノートを渡された耕作。それは毒殺された岩下が持っていたもので20年前に亡くなった民俗学者である耕作の父・耕之介(佐戸井けん太)が書いたものだった。鳥啼島は殺された岩下の出身地で、さらにドラマスタッフから指定されたロケ地でもあったため、耕作は不気味な偶然に興味を惹かれる。そこで父の耕之介と古くから付き合いがある心理学者の尾車(里見浩太朗)に鳥啼村のことを尋ねるのだが、尾車は言葉を濁しつつ、かつて耕之介が最も恐れていた村だと伝える。耕作は父が何を恐れていたのか確かめようと、撮影のロケハンということで鳥啼島を訪れることにした。彼に同行したのはプロデューサーの柿沼(デビット伊東)、脚本家の窪田(阪田マサノブ)、主演俳優の結城翼(上遠野太洸)、結城のマネージャーで鳥啼村出身の鳥神翔子(雛形あきこ)という面々。しかし、それはまさに新たな惨劇の始まりだった...。

島に古くから伝わる「財宝伝説」をモチーフにしながら、不気味でクセの強い島民たちが登場するなど、冒頭からスピーディーな展開に引き込まれる。小泉は抑えた芝居と力みのないナチュラルな表現で主人公を演じており、好感が持てる。名探偵役としては、やや頼りなさもあるのだが、そこがかえって小泉らしくていい。共演者では、何か秘密を抱えていそうでミステリアスな翔子を演じる雛形と、その従妹で鳥神家の分家の娘・京子役の遠野なぎこの存在感が光る。さらに、鳥神家の当主で翔子の祖母である鳥神姫羽を演じる小柳ルミ子も素晴らしい。全体的に女優陣が頑張っている印象が強い作品だ。

本作は孤島を舞台にいまわしい連続殺人事件が起こるなど、おどろおどろしい雰囲気が横溝正史のミステリーを思わせる。物語の核となる「鳥神家」というネーミングや落武者にまつわる伝説など、横溝作品へのオマージュとも思える設定が散見するのも、ミステリーファンには嬉しいところ。もちろん、ストーリーは完全オリジナルだし、安易な二番煎じのような作品でないことは言うまでもない。

小泉が自然な演技で作りあげる朝比奈耕作の好青年然とした名探偵は、過去のミステリー作品には珍しく、なかなか新鮮だった。結局、ドラマ化も2作だけで終わってしまったのだが、もう少し見てみたいと思わせる作品だ。

文=渡辺敏樹

この記事の全ての画像を見る

放送情報【スカパー!】

ミステリー作家 朝比奈耕作シリーズ 鳥啼村の惨劇
放送日時:12月12日(火)17:00~
放送チャンネル:ファミリー劇場
※放送スケジュールは変更になる場合があります

詳しくはこちら

キャンペーンバナー

関連記事

記事の画像

記事に関するワード

関連人物