西島秀俊が"神の診察眼"を持つ医師を演じる、ドラマ「無痛~診える眼~」の魅力に迫る

(C)フジテレビジョン/共同テレビジョン 原作:久坂部羊「無痛」(幻冬舎文庫)

その直後、通り魔事件に巻き込まれた時に、刺された妊婦や義姉・井上和枝(浅田美代子)に迅速に応急手当をし、到着した救急隊員にテキパキと指示する姿からは、医師としての責任感、傷ついた人を救わずにはいられない強い想いが垣間見える。物語の開始早々に"為頼英介"というキャラクターの人間像が強く印象付けられるのは、やはり西島の演技の力と言っていいだろう。

また、生死と向き合う医師を演じる一方で、和枝の病室で大口を開けてうたた寝したり、何も食べずに家に帰ったところにお弁当の差し入れがあって大喜びしたり、どこかに実在していそうなのんきなイケメンおじさん、といった姿も西島は見せてくれる。

実は本作の制作にあたって、西島は佐藤祐市監督から「普段会って、ぼんやりと笑っているキミの姿をそのままドラマで見せたい」と言われたという。本作には和枝と英介のほのぼのとした食事シーンや、甘いものに目がないという西島がスイーツを頬張るシーンなども多くあり、「普段着の英介=素の西島」が見られるところにも注目してほしい。

物語はアパートでの老人殺人事件や、妄想型統合失調症と診断され無罪となった男の再犯などを解決していくと同時に、早瀬が追いかける凄惨な一家殺害事件の手がかりや、早瀬自身が抱える問題、無痛治療を目指す白神メディカルセンターの院長・白神陽児(伊藤英明)との関係など、さまざまな要素が絡み合いながら進んでいく。

そして物語の要所で、西島はその演技力によって英介の心情を如実に伝えてくれる。例えば第3話で、刑事である早瀬に"犯因症"が出ると伝えた時の厳しい目つきとセリフのテンポは絶妙だし、"犯因症"を治してくれと頼まれたときに見せる険しさと辛さが混ざった表情には、治す方法がわからないことへの無力感と、自分の中に巣食う矛盾に苦しむ早瀬を思う気持ちが混ざっているのがよく分かる。

西島自身が楽しんで撮影に臨んだ作品だけに演技は冴えているし、声の抑揚やセリフのテンポなども秀逸だ。西島の魅力が詰まった一作と言ってもいいだろう。人を苦しみから救う医師であり、また、犯罪から人を救う医師でもある英介は、過酷な事件が続く状況でどんな選択をしていくのか。先の見えないストーリー展開はもちろん、世界的俳優となった西島の好演にも注目しながら、本作を楽しんでほしい。

文=堀慎二郎

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放送情報【スカパー!】

無痛~診える眼~ 一挙放送
放送日時:2023年12月24日(日)11:40~
チャンネル:ファミリー劇場
※放送スケジュールは変更になる場合がございます

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