高島礼子の女優としての力量を痛感するドラマ「御宿かわせみ」

確かに、劇中でるいが一途に東吾を愛する素直なまなざしの艶やかさ、さらに旅館の女主人としての風格など、高島演じるヒロインは、新たな魅力をもっていた。相手役の中村も好演し、全体的に大人のムードが漂う作品に仕上がったという印象だ。視聴者にも好評で、「御宿かわせみ~第二章」と銘打った第2シリーズの放送も決まり、1年後の2004年4月からスタートしている。第1シリーズでは、現場の気迫がこもった力強さが感じられたが、第2シリーズでは、前作の緊張がいい意味で緩和されて、柔らかな雰囲気が漂っていた。原作者の平岩弓枝も「いい意味で"緩み"が出て、それが味になっている」と第2シリーズの感想を漏らしたそうだ。

共演者やスタッフと気心も知れたことで、一体感が強まったのか。そんなムードのよさが旅籠「かわせみ」のもつ温かい人情世界にマッチしていたという印象だ。主人公2人の切ない恋物語を軸としながら、1話完結で事件を解決していくテンポの良さもさることながら、2人を取り巻く人々の個性も際立っていた。老番頭・嘉助を演じた小野武彦、出戻りの女中頭・お吉を演じた鷲尾真知子、剛直な旗本・麻生源右衛門役の井川比佐志といった味のある役者が揃い、画面を引き締めてくれている。

再び1年後の2005年5月には、金曜時代劇「御宿かわせみ~第三章」がスタート。一部キャストの変更はあったが、主人公2人はそのまま続投し、すっかり人気シリーズとして定着した。第3シリーズでは、定町廻り同心・畝源三郎を演じた沢村一樹が新鮮な魅力を放っていた。

本作の魅力は、やはり主演の高島礼子の好演によるところが大きいだろう。人気が高い作品のリメイクとなると、どうしても前作と比較されるので視聴者の見る目は厳しくなる。それでも、艶のある演技と映画「極道の妻たち」シリーズでも見せた風格を感じさせ、しっかりと自分なりの「るい」像を体現して演じきった実力は感嘆に値する。

見ごたえ十分な時代劇「御宿かわせみ」は、大人の鑑賞に堪える作品であり、時代劇の傑作のひとつとして大いに見る価値があるといえる。昭和のドラマファンにはもちろん大歓迎だが、できればこの機会に令和世代の若い層にもぜひ見てほしい秀作である。

文=渡辺敏樹

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放送情報【スカパー!】

御宿かわせみ (高島礼子版) #1
放送日時:1月4日(木)12:00~
放送チャンネル:ファミリー劇場
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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