夫に内緒で石山との不倫関係を続け、ある時2人は石山が買った北海道の別荘に家族同士で旅行に行く計画を立てる。石山の妻にも関係を疑われている中、カスミと石山は隙をみて別荘の中で肌を重ね、「子供たちを捨ててもいい」と呟く。その直後に起こるのが長女・有香の失踪事件だ。5歳の娘がそんなに遠くに行くわけはないと思われ、周辺を捜索するものの捜査はいっこうに進まず、事件から4年の月日が流れてもカスミの中の時間は止まったまま。夫からは愛想をつかされ、事件の関係者も毎月、電話をかけてくるカスミに閉口している。石山も行方不明になり、連絡が取れない中、カスミは東京から離れ、北海道に娘を探しに行くことを決意。罪の意識に苛まれながらも、女性であることを捨てきれないカスミの未成熟な危なっかしさ、孤独を表現した天海の演技に吸い込まれていく。
■元刑事・内海(松岡俊介)との旅先での出会いがカスミを変える
カスミの中の時計の針が少しずつ動き出していくキッカケとなったのが元刑事で余命いくばくもない内海(松岡)との出会いだ。事件に興味を持った内海は、カスミと毎日車を走らせ、別荘を訪ね、有香失踪の手がかりを追い、札幌で暮らしていた石山とも再会する。ミステリーでありながら、テーマは"旅"なのではないだろうか?と思わせるのが本作。内海の車の中ではブルースが流れ、広大な北海道の道を走っていくシーンはロードムービーを思わせるし、故郷を捨て、娘を失ったカスミが自分自身に向き合い、もがきながら生きていく様も人生の"旅"を想起させる。北海道の冬の厳しい自然の中、何かを決意したような天海の美しい横顔が余韻を残す映画だ。
文=山本弘子
放送情報【スカパー!】
柔らかな頬
放送日時:3月15日(金)7:45~
放送チャンネル:日本映画専門チャンネル
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