――良い関係が40年以上、続いているんですね。
北大路「良き出会いに恵まれ、今、この作品で共演できていることで喜びが倍増しています」
伊東「それは私が言うことですよ。私は最初の舞台も映画も時代劇だったのですが、時代劇のことはまったく知らずにやっていました。それが『銭形平次』に呼んでいただき、88本撮っている間に学ばせていただけた。侍の歩き方、町人の歩き方、刀の差し方などを全部、北大路さんをはじめ皆さんが見せて教えてくださった。ありがとうございました」
北大路「いえいえ。私も先人から教わったものですから。それが、こうして『三屋清左衛門残日録』でも共演させていただき、シリーズも7作目。毎回演じるたびに伊東さんから何らかをいただき、私はそれに反応することでお芝居できている。それが楽しく、うれしくて、同じことを繰り返しているという感覚は一切ないですね」
――「―ふたたび咲く花」では、事件が見えてくるきっかけとなる少年・俊吾を演じる一ノ瀬嵐さんの存在も際立っていましたが、どのような印象を持たれましたか?
北大路「彼は撮影当時まだ11歳だったのですが、演技に加えて音楽もダンスも若い頃から...って今も若いですが(笑)、ずっとやってきたそうなんです。それも、言われたからではなく好きだから自ら望んでやってきたと。自分の12歳の頃と比べてみて、すごいなと思いましたね。だから、現場では『先輩』と呼んでいました。私がデビューしたのは12歳でしたし、彼は11歳であのようなお芝居をするので『大先輩だ』と伝えたら、ポカーンとしていました(笑)」
伊東「私は同じシーンがなかったので、一ノ瀬さんには会えなかったのですが、子役さんのうまい子を見るとびっくりしますね。小料理屋のシーンに出てくる小林綾子さんは、連続テレビ小説『おしん』でご一緒した時にびっくりしました。例えば、何回リハーサルしても、毎回まるで初めて聞いたような表情をして真剣に驚くんです。その彼女がこのシリーズでは小料理屋のシーンに出演されているのですが、今もご一緒できているのがうれしいです」
――第7作「―ふたたび咲く花」の印象に残っているシーンを教えてください。
北大路「どのシーンも新鮮でしたが、中でも金田明夫さん演じる筆頭家老の朝田弓之助と清左衛門が対峙(たいじ)するシーンは印象的ですね。隠居の身の清左衛門と朝田家老が会うきっかけがきちんと練られているし、その後は清左衛門と熊太という、変化球と直球の両方で彼を攻めていくのでとても面白く感じました。詰め寄るシーンは毎回ありますが、今回は珍しく熊太と二人で詰問するんです。その際の金田さんの反応を見るのも楽しかったです」
伊東「北大路さんと金田さんの掛け合いが好きなので、個人的には二人のシーンをもっと増やしてほしいなと思っていました(笑)。それから、私は(清左衛門と熊太、優香演じる里江との)ラストシーンも好きですね。ほんわかとしていて」
北大路「あそこはお互いに何の飾りもなく、素っ裸ですね。そうして、疲れたものを流し落とし、新たな気持ちでまた次に向かえるのだと思います」
取材・文=及川静 撮影=大川晋児
原作=藤沢周平『三屋清左衛門残日録』(文春文庫刊)
「山姥橋夜五ツ」(文春文庫『麦屋町昼下がり』所収)
放送情報【スカパー!】
三屋清左衛門残日録 ふたたび咲く花
放送日時: 3月9日(土)19:00~ほか
放送チャンネル:時代劇専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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