上川は、主人公・重藤成一郎を演じた。誘拐事件が起きた昭和49年では所轄勤務の若き刑事として捜査に加わり、時効1年前の昭和63年では特別捜査班の管理官として再捜査を指揮する。叩き上げで警視まで昇進した重藤だが、失敗すれば責任を取らされる。キャリア組に背負わせるわけにはいかない損な人事であることは、承知の上だ。誘拐された子供を殺された上に犯人を逃してしまった後悔と十字架を背負い、現場に臨む。その重さと強い覚悟が、刻まれた皺や厳しい表情、揺るがない言葉から伝わる。そして、時を経た平成20年では、警察を引退した元刑事として登場する。日下たちが調べている殺人事件を新聞記事で見つけ、鋭い視線を送る。事件から34年経ってなお、その心の奥底には怒りと苦しみが消えない執念として残っている。上川は、それぞれの時代を生きた重藤という男を年代ごとにリアルに演じ分けた。過去を積み重ねてきた変化と、歳を重ねても変わらない生真面目さと警察としての矜持が感じられた。
また、物語の始まりである平成20年の殺人事件の真相解明に奮闘する刑事・日下悟は、小泉孝太郎が演じた。小泉も上川同様、2003年の大ヒット映画「踊る大捜査線 レインボーブリッジを封鎖せよ!」をはじめ、刑事役を多数演じてきた。今作で演じるのは、代表作の一つである「警視庁ゼロ係」シリーズでのコミカルなキャラクターとは全く真逆の役柄。日下は現代を生きる男ながら、どこか昭和感が漂う。持ち前の実直さで粘り強く捜査を続ける刑事もまた、小泉のハマり役だ。強い熱量を胸に事件と向き合う言葉には、心からの思いが乗る。嘘のない直向きな姿が、過去を封じた重藤の心も、辛い日々を過ごしてきた遺族の心をも動かし、真犯人へと近づいていく。
昭和と平成、それぞれの時代で真相解明のため奮闘した刑事たちと事件に翻弄される遺族の姿が描き出された本作。静岡県警本部長役の高嶋政伸や誘拐事件の被害者の姉を演じた内田有紀の他、でんでん、甲本雅裕、田中要次ら再捜査にあたる刑事にも実力派が揃った。彼らが織り成す重厚で骨太なストーリーと、上川と小泉の時を超えたバディ感も見どころの一つだ。
文=中川菜都美
放送情報【スカパー!】
連続ドラマW 真犯人
放送日時:5月2日(木)14:15~
放送チャンネル:WOWOWプラス 映画・ドラマ・スポーツ・音楽
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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