息子は、その男にも頑なにいじめの事実を言わないが、たまりにたまっていく理不尽さは、ある行動へと駆り立てられていき、それは漫画家のアシスタントの人生へと交差していく。
奥田監督が描く作品には、行き場をなくしてしまった人たちが、右往左往する姿が、絶妙な緩急を取り入れつつ、リアルに描かれている。一見、シチュエーションはなかなか現実離れしているが、ふと考えると誰にでも起こり得るような導線であるため、非常に自分事になり、感情移入してしまう。
2023年の劇場公開まで6年という歳月を費やした映画。救いがない状況のなか、人は何に救いを求めるのか―。明確な答えは出ないが、観終わったあと、どこかいい意味で弄ばれたような爽快感がある作品になっており、高校生を演じた笠原崇志、漫画家のアシスタントを演じた田中惇之、さらに高校生の母親役の堀内暁子、アシスタントと同棲する小劇場で役者をする女性役の古川奈苗の何とも言えないリアルな芝居は、自分事感を増幅させてくれ、まさに隣で起きているようなジワッとした湿り気がある。
文=磯部正和
放送情報【スカパー!】
青春墓場
放送日時:5月24日(金) 22:50~ほか
放送チャンネル:日本映画専門チャンネル
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