白洲迅の表情の演技が印象的!直木賞作家・奥田英朗の小説が原作の映画「向田理髪店」

(C)2022 映画「向田理髪店」製作委員会

明るくてポジティブな母親の恭子は、筑沢に帰ってきた和昌を温かく迎え入れるが、地元での暮らしに満足していない父親の康彦の心理は複雑だ。東京から久しぶりに故郷に戻ってきた旧友が「筑沢に住みたい」と話すと、「田舎を軽く語るな」と突っかかり、「家業を継ぐために理容師学校に通う」という息子にも懐疑的。喜ぶどころか、仕事よりも結婚を急かすようなことを言い、和昌もウンザリしている。ぶっきらぼうになりがちな父と息子のあり方は実に自然体で、当時、白洲も完成披露上映会で「撮影に入ってすぐ親父でいてくれたし、母ちゃんでいてくれた」とコメントしている。

物語の中で和昌の心境が変化するのは、大輔という青年が中国人女性・香蘭(運上弘菜)と結婚することになったものの、祝賀パーティに出席する直前で会場から逃げ出した時だ。康彦と共に大輔を探しにいった和昌は、町の人たちの視線や偏見を怖がる大輔に「ここに住むなら開き直るしかない」と言葉を尽くして説得する父親の姿を初めて見ることになる。驚きながらも、少し見直したような、そんな白洲の表情が心に残る。

■人々との触れ合いの中、やがて自分の道を歩み出していく親子

(C)2022 映画「向田理髪店」製作委員会

康彦は同級生の瀬川(板尾創路)や修一(近藤芳正)と集まって酒を飲むくらいで、基本は平坦な日々を過ごしている。しかし、仲間内でマドンナ的存在だった同級生の娘である早苗(筧美和子)がスナックを開店したことで仲間と盛り上がったり、筑沢を舞台にした映画が撮影され、恭子もエキストラとして出演、和昌もヘアメイクのアシスタントとして採用されることになったりする。何も刺激がなかった穏やかな町で次々にハプニングや事件が起こり、親子もついにぶつかり合わずにはいられない局面を迎える。

息子と同じように、かつては上京して働いていたことがある父親と、地元に戻ったことによって家族や自分の進む道について改めて考えた息子。筑沢の素朴な景色の中、変化していく表情や間合いが視聴者を温かい気持ちにさせ、父親と息子の涙や笑顔が刺さってくる本作。白洲が見せるグラデーション的な演技も併せて楽しめる。

文=山本弘子

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放送情報【スカパー!】

向田理髪店
放送日時:2024年9月5日(木)21:00~、10月9日(水)16:50~、10月31日(木)18:55~
チャンネル:映画・チャンネルNECO
※放送スケジュールは変更になる場合がございます

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