半田健人ら役者陣が「仮面ライダー555 20th」で紡ぐ「特撮ドラマ」を超えた「特撮人間ドラマ」

「平成仮面ライダー」シリーズの第4作にして、同シリーズの人気を頂点まで押し上げた伝説の作品、「仮面ライダー555(ファイズ)」(2003~2004年、テレビ朝日系)。そのテレビシリーズ最終話から数年後を描いた続編が「仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド」だ。

20年ぶりの時を経て再び描かれる、人類の進化系・オルフェノクと人類を巡る物語の"その後"は、「仮面ライダー」という特撮ドラマのジャンルの枠を超えた濃厚な人間ドラマが展開され、現在大人になった当時の子供たちに向けた珠玉の作品として"リゲイン"されている。そんな作品において、20年という決して短くない時の隔たりをしっかりとつなぎ止めているのが、主演の半田健人をはじめとする役者陣の演技だろう。

「仮面ライダー555」といえば、人と元は人だった怪人"オルフェノク"との戦いを描いており、従来描かれることのなかった怪人側のドラマにもスポット当てた意欲作。怪人に変わってしまった者の苦悩や、前作の「仮面ライダー龍騎」(2002~2003年、テレビ朝日系)から継承される"ライダーに変身する人間が決して善良ではない"こと、怪人側にも正しい考えを持つ者がいるなど、単純な善悪二元論では割り切れないドラマ性が特長で、登場人物同士のさまざまな人間関係によるシリアスな物語が展開された。

「仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド」では、アクションもさることながら、この特長が一層磨き上げられており、20年前の子供たちを魅了している。

テレビシリーズの最終回では解体・倒産を暗示させる描写がなされた「スマートブレイン社」が、政府の管轄下に置かれてオルフェノクの絶滅を目的とした組織となっており、そこに所属する「仮面ライダーミューズ」の胡桃玲菜(福田ルミカ)らが、オルフェノクの殲滅活動を進める。一方、かつて「仮面ライダーファイズ」の乾巧(半田)と共に人類とオルフェノクとの共存を目指し、現在はオルフェノクと共に共同生活を送る園田真理(芳賀優里亜)らは、秘密裏にオルフェノクの庇護を行っていた。

ある日、真理と行動を共にする「仮面ライダーカイザ」の草加雅人(村上幸平)とスネークオルフェノクの海堂直也(唐橋充)が「仮面ライダーミューズ」と交戦していると、数年前に真理たちの前から姿を消し、消息不明となっていた巧が現れる。海堂らが安堵する中、巧はかつてとは異なる姿の「仮面ライダーネクストファイズ」へと変身し、スマートブレイン社の尖兵として力を使い始める。

アクションシーンはさすがの迫力とスピード感で"特撮ファン"を存分に楽しませてくれるのだが、何よりストーリー性が抜群。人類とオルフェノクの関係において"排斥か、共存か"というテーマはそのままに、どちら側にも正義と理念がある"深み"、スマートブレイン社側に付いた巧の"思い"、共存を目指すオルフェノクたちの"頑張り"、巧の無事を祈って待ち続けた真理たちの"心情"と巧の裏切りを知った"絶望感"、物語後半で描かれる巧と真理が"心を通わせる瞬間"など、登場人物たちが織り成すヒューマンストーリーに心が揺さぶられ続ける。表現においても、PG12ということで大人な表現も挿入することで、巧と真理の友情や仲間意識を超えた愛情を表出するほか、「月がきれいですね(=I love you)」といった古めかしい表現を使って奥ゆかしい思いの伝えるなど、各所にちりばめられた大人向けの表現がにくい。

そんな人間ドラマ性の高い作品を、しっかりとつなぎ止めているのが役者陣の熱演だろう。20年という時間を経ていながら、劇中の時間経過感と内面的な時間が止まっている様子を、繊細に演技で表現している。例えば、半田が表す「巧の"変化はしているのだが、どこか時間が止まっているように感じられる"雰囲気」だったり、芳賀らが表す「巧を待ち続けてしっかりと時間の経過を体で感じている真理たちの疲れ果てた表情」など、本当に20年ぶりの撮影なのかと疑うほどにテレビシリーズから役の雰囲気がつながっている中で、劇中の経過した時間をもしっかりと描写している。

20年ぶりの復活ということで、当時のファンに寄り添った"特撮ドラマ"を超えた"特撮人間ドラマ"。それを実現させた役者陣の繊細な演技を堪能していただきたい。

文=原田健

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放送情報【スカパー!】

仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド
放送日時:10月6日(日)11:00~
放送チャンネル:東映チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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