だが、ある日、彼女の生活に変化が訪れる。ミヤビの前にアメリカ帰りの脳外科医である三瓶が現れ、ミヤビに医療行為を手伝わせようとしたり、無理だと言われていた治療の可能性を見出したりするのだ。なぜ、三瓶はそんなことをするのか。その理由はミヤビの失われた2年の間にあるらしく、二人の関係は徐々に明かされていくことになるが、彼のミヤビを信じる姿勢が彼女の意識に変化をもたらしていく。昨日の記憶が失われているはずなのに、変化が生じていく様はまさに奇跡で、おそらく視聴者も劇中の同僚らと同様に涙してしまったはずだ。
そんな心が心を動かす展開と、杉咲や若葉らの繊細かつナチュラルな演技が見事に融合し、視聴者の心に染み込んでいった結果、各所で反響を呼び、放送文化の向上に貢献した番組や個人・団体を表彰する「ギャラクシー賞」の2024年6月度月間賞を受賞。無料見逃し配信(カンテレドーガ、TVer)の再生数を最終集計した結果、全話累計2230万再生を超え、カンテレ連続ドラマ歴代1位を記録する作品となった。
■変えたいけど、変えられない状況や環境に立ち向かう登場人物たち
今作には、毎日ひたむきに医療と向き合うミヤビや三瓶らが勤める丘陵セントラル病院と対照的に、権力や派閥に翻弄される関東医科大学病院も登場する。そして、こちらにも一組のカップルがいるのだが、その二人の関係はミヤビ&三瓶とは対照的だ。生田演じる麻衣は西島医療グループ会長の孫で、岡山演じる綾野は同大学病院の脳外科医。上昇志向の強い綾野は麻衣と政略結婚することで、より高い地位へと上り詰めようとしていた。
一方、幼い頃から西島家の娘として育ってきた麻衣は諦観している人物のようだが、表情を見ているとどうやら綾野に恋愛感情があるらしい。しかし、物語序盤では彼女の本心が見てとれる場面はとても少ない。そのため、演じる生田も苦戦したようで、「麻衣の行動や発言と心情をつなげることに苦労した時期があった」という。そんな麻衣も本心が見えるにつれて言動が変化していき、そこも見どころの一つになっている。
ミヤビや麻衣のように、変えたいけれど、変えられない状況や環境に立たされている人は少なくないはずだ。今作はそんな人々の"変えられないと思っている明日"に打ち勝つ気持ち=希望を与えてくれるドラマであるが、杉咲花や若葉竜也らの凄まじい芝居とストーリーがマッチして、見る者の心を掴んで離さないミラクルな作品になった。
文=及川静
放送情報【スカパー!】
アンメット ある脳外科医の日記(全11話)
放送日時:10月5日(土)12:00~
放送チャンネル:日本映画専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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