2015年に日曜劇場で放映され、高視聴率を記録した阿部寛主演の「下町ロケット」。「半沢直樹」でも知られる池井戸潤原作の本作の主人公は阿部演じる佃製作所の社長・佃航平。父が遺した町工場を立て直し、少年の頃からの宇宙への夢を胸に社員と一丸になって、大企業・帝国重工のもとロケット事業にも取り組み、数々の困難を乗り越えていく物語だ。
最初のシーズンではロケットを飛ばすのに不可欠なバルブシステムの開発や心臓病患者のための人工弁「ガウディ」の開発が描かれたが、2018年に放映された「下町ロケット」のテーマは"宇宙から大地へ"。帝国重工の社長・藤間(杉良太郎)が的場(神田正輝)に交代すると噂される中、「スターダスト計画」の部長・財前(吉川晃司)は次のロケットの打ち上げが最後になるかもしれないと告げられ、佃たちもその渦の中に巻き込まれていく。
さらに長年の取引先である農機具メーカーからも小型エンジンの取引を縮小化すると言われ、窮地に陥る佃製作所。そんな時、実家が農家を営んでいる経理部長・殿村(立川談春)の父が倒れ、度重なるピンチの中、佃は意外なところに光を見出していく。クセ強めの主人公を演じることが多い阿部だが、社員200名の中小企業の社長、佃は不器用なぐらい真っ直ぐで行動力があり、嘘がないゆえに信頼される男だ。撮影中も共演者から「社長」と慕われていたという阿部が本作で見せた役柄の魅力とは―。
■阿部が演じるのは社員がついていきたくなる前向きで情に熱い社長
「ロケット品質・佃プライド」を掲げる製作所を率いる佃は「職人にとって部品は魂でたった一つの宝なんだ」と語る熱い性格。とはいえ、矢面に立って悔しい想いをしても滅多なことでは社員を怒らず、大好物の大福に当たったり、ぶつぶつ願掛けをしながらボウリングをするぐらいなものである。リーダーシップをとる人間として「さすが」と思わせられるのは回復力の早さだ。"ピンチはチャンス"を絵に描いたような発想の転換と不屈のメンタルを持ち、問題が起きた時には必ず山崎(安田顕)や殿村たちに相談し、技術や夢と同じぐらい人を大事にする。阿部はそんな佃社長を自然と演じている。
■時代は変わっても変わらない大事なものを教えてくれるドラマ
元帝国重工の社員でベンチャー企業・ギアゴーストを立ち上げた伊丹(尾上菊之助)と天才エンジニアと言われていた島津(イモトアヤコ)が窮地に陥った時には全力で助け、ロケット事業から撤退させられて意気消沈している財前を誘い、一緒に農作業をする佃は見返りを求めたりはしない。"ゴースト編"、"ヤタガラス編"の二部構成となっている本作には佃の旧友で無人農業ロボットの研究をしている野木教授(森崎博之)も登場。佃製作所を叩き潰そうとする敵たちとのドロドロの攻防戦も描かれる中、佃には帝国重工のバルブ開発部門のリーダーとなったひとり娘・利菜(土屋太鳳)や社員を始め、技術と人脈という財産がある。日本再生のメッセージも込められているであろう本作を、阿部の人間臭い演技とともにじっくり味わってほしい。
文=山本弘子
放送情報【スカパー!】
下町ロケット(2018)(全11話)
放送日時:11月23日(土)12:00〜
放送チャンネル:WOWOWプラス 映画・ドラマ・スポーツ・音楽
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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