佐野史郎の怪演がマザコン男・冬彦さんを社会現象にまで押し上げた!賀来千香子の震える演技や野際陽子の異常愛の姑役も目を引く名作「ずっとあなたが好きだった」

「ずっとあなたが好きだった」(日本映画専門チャンネル)
「ずっとあなたが好きだった」(日本映画専門チャンネル)

このとがりきったキャラ・冬彦を、唐十郎が率いた状況劇場出身の名優・佐野が水を得た魚のごとく文字通りの「怪演」で魅せる。美和との関係がうまくいかないと、冬彦は木馬にまたがり無表情でユラユラと揺れたり、美和の気持ちが洋介にあることを察した際には、唇をかみしめながら「ウーウー!」と駄々っ子のように唸ったりなど、「次にどんなことをしてくるのか全く読めない」人物がそこに、息づいているのだ。

その恐ろしさに拍車をかけるのが、当時56歳の野際陽子が演じる母・悦子との艶めかしい親子関係。夫亡き後、悦子は冬彦だけを見つめ続け、一種の共依存の関係に陥っている。第1話、ケガをして血を流した冬彦の指を悦子が急いでなめると、続いて冬彦が自らもなめる場面には、全視聴者が凍りついたものだった。

密すぎる親子描写は、佐野と野際が演技のキャッチボールを重ねた賜物とのことだが、その甲斐あって「冬彦さん」は視聴者の目を釘付けにし、当初の予定よりセリフや場面が大幅に増え大役に成長。マザコン男性を指す代名詞と化し、年末には流行語大賞の金賞にも選出、時代を象徴する役となった。

佐野は本作でアングラ俳優から一気にメジャーな存在に。野際は続く「ダブル・キッチン」(1993年)でも佐野と共演し、アクの強い姑役が当たり役となる。さらに1993年の続編的ドラマ「誰にも言えない」では賀来、佐野、野際が再び顔をそろえ、今度は賀来と佐野は元恋人同士、佐野の義母が野際という、役柄を変えた形で変奏曲を織り成していく。それら一大ブームの源が、佐野の度を越した演技力に端を発していたという点では、異常な愛を扱った内容とは裏腹に、ものづくりの現場として実に健全で幸福な環境だったと言えるのかもしれない。

「ずっとあなたが好きだった」(日本映画専門チャンネル)
「ずっとあなたが好きだった」(日本映画専門チャンネル)

文=magbug

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放送情報【スカパー!】

ずっとあなたが好きだった#1-6
放送日時: 11月4日(月)19:30~
チャンネル: 日本映画専門チャンネル
※11月4日(月)に#1-6、5日(火)19:30に#7-13を放送
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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