声のトーンを2段階上げた理由
――矢野くんを演じる上で意識した点を教えてください
「実年齢よりも10歳若い役なので、高校生のような気持ちを持つことと、高校生に見えないといけないなということは意識していました。いざ現場に入ると池端さんを含め、現役高校生のキャストの方が複数人いたので、その子たちのおかげで、フレッシュさ溢れる画が撮れたのではないかと思います」
――高校生らしいフレッシュさというのを、八木さん自身はどう解釈しましたか?
「僕自身がそうだったのですが、高校生って高校の中の世界がすべてなんです。高校での出来事が自分の中での物語でもあり、人生のすべて。だから、そういったところで感じる感情が100%だと思いましたし、70%くらいの曖昧な感じがなかったなと思い返しました。なので、矢野くんが憧れていた何気ない日常の一つひとつの出来事に対して、全力で感動するようにしましたね」
――小川プロデューサーが八木さんと矢野くんが似ていると言っていたのが印象的でした。ご自身で近しいと思ったポイントはありますか?
「少しポヤっとしてる部分ですかね。それから嬉しかった出来事に対して120%の感情で喜ぶ点も共感できる部分だなと思いましたね」
――声も普段よりも高くされているのかなと感じました。それはなぜでしょうか?
「そうですね。ワントーン、ツートーンぐらい上げて会話するのを意識しました。自分にとってのトラウマを話す時も、暗いシーンにはしたくなかったんです。矢野くんがかわいそうな人には見えてほしくないなっていう想いもありました。新庄監督と話し合って、応援したい、みんな幸せになってほしいと思ってもらえたらなと工夫しました」
撮影中「怪我をするような動きに慣れた」
――怪我のシーンやびっくりするようなシーンがたくさんありました。アクションシーンについても教えてください
「実は『HiGH&LOW』でお世話になったみなさんが、今回も指導に入ってくださいました。ただ『HiGH&LOW』のときは、殴る蹴るなどのわかりやすい動きのアクションが多かったのに対して、今回は怪我をするシーンでふとした時のアクシデントをどう演じるかという指導でした。だから、そこはすごく大げさに、見ている人が何が起こるんだろうってハラハラするような動きを意識しましたね。アクションチームの方とも"どういうのが一番リアルさもありながら、派手な怪我に見えるんだろう"と相談し合いながら撮りました」
―― 殺陣のように細かく動きを決めて、その通りにやっていったのでしょうか?
「そうですね。つまずいてから、木製の案内に頭をぶつけて、そこから自分の鞄に滑って...と殺陣みたいに流れが決まっていたので、難しかったです。何回もテイクを重ねました。何回もチャレンジするうちに、ちょっと怪我をするような動きに慣れてきちゃっていました」
――怪我のメイクも印象的でした
「あれは、僕はメイクさんや衣装さんが大変そうでした。前のシーンとの繋がりを意識しなきゃいけなかったので、大変だったと思います。そういうのを徹底的に意識してくださっていたからこそ、画的にもすごくいいものになったと思うので、感謝しかないです」
矢野ドリームならぬ、八木ドリームは?
――撮影現場で八木さんが予期しなかったハプニングはありましたか?
「現場にいて"まじか!"と思ったのは崖のシーンの撮影の時ですかね。そのシーンでザリガニに指を挟まれるんです...。もともと台本に書いていなかったのもあって、なんでザリガニがいるんだろうと思いながらも、映像で見た時はリアルで笑っちゃいました」
――作中で矢野くんが日常生活のやって見たかったことを"矢野ドリーム"と言われているシーンがありました。ぜひ八木さんの"八木ドリーム"を教えてください
「実は、この作品、まだ打ち上げができていないんです。なので、みんなと打ち上げをすることが今の僕の八木ドリームです!」
文=於ありさ 撮影=MISUMI
映画情報
映画『矢野くんの普通の日々』
11月15日(金) 公開
原作:田村結衣「矢野くんの普通の日々」(講談社「コミック DAYS」連載)
監督:新城毅彦
脚本:杉原憲明 渡辺啓 伊吹一
出演者:八木勇征 池端杏慈 中村海人 白宮みずほ 伊藤圭吾 新沼凜空 筒井あやめ
主題歌:Yellow Yellow/FANTASTICS from EXILE TRIBE (RhythmZONE)
配給:松竹
©2024 映画「矢野くんの普通の日々」製作委員会 ©田村結衣/講談社
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