浜辺美波、赤楚衛二、佐野勇斗ら若手人気俳優陣が出演する緊迫の会話劇「六人の嘘つきな大学生」が、11月22日から公開されている。本作を手掛けるのは、密室での長い会話劇を得意とする佐藤祐市監督。第50回ブルーリボン賞作品賞ほか多数の賞に輝いた「キサラギ」(2007年)や、竹内結子が主演を務めた人気ドラマの映画版「ストロベリーナイト」(2013年)など、多数の話題作を生み出してきた。そんな佐藤監督の手掛けたなかで、印象深い作品が「脳内ポイズンベリー」(2015年)だ。
12月25日(水)にWOWOWシネマで放送される本作は、悩み惑うアラサー女のリアルな心情を、5つの思考の擬人化によって描き出す新感覚の脳内エンターテインメント。ヒロインの小悪魔ぶりが話題を呼んだ人気コミック「失恋ショコラティエ」の作者・水城せとなによる同名漫画を原作に、豪華キャストが集結して実写化された。
会社を辞めて携帯小説を書いて身を立てている30才独身の櫻井いちこ。特に小説家を目指しているわけでもなく、根無し草のような日々を送っている。ある日、飲み会で出会ってから気になっていた年下男子・早乙女に偶然遭遇。運命の再会にときめくが、頭の中はパニック状態に。いちこの脳内では、様々な感情たちによる"脳内会議"がスタートする。理性、ポジティブ、ネガティブ、記憶、衝動の5つの思考が議論し、彼女がどうすべきかを巡って衝突し続ける。会議の末に勇気を出して話しかけた結果、2人でご飯を食べることになるが、事態は思わぬ方向へ進んでいく...。
年下男子に好意を抱くヒロイン・いちこを演じたのは真木よう子。恋愛で傷ついた過去の黒歴史が頭の中に封印されているいちこは、自分にとっての幸せとは何か思い悩む。現実に生きるいちこ自身はごく普通のどこにでもいる女性だ。脳内で騒ぎ立てる思考たちの動きを受けた、ありのままの反応を真木がごく自然に演じている。
そして、本作で注目したいのが、ヒロインの脳内にいるキャラクターたちだ。理性を担当する脳内会議の議長・吉田は西島秀俊、ポジティブ担当の石橋を神木隆之介が演じたほか、ネガティブ担当・池田役に吉田羊、記憶担当・岸さん役には浅野和之と実力派が揃い、衝動担当・ハトコ役の桜田ひよりも愛らしくやかましく脳内会議を盛り上げる。
いちこの揺れ動く心や思い思いに発言し行動する自分勝手な思考たち。予想外の展開にいつも振り回されてしまう理性的な議長・吉田を、西島がコミカルに熱演。真木とはサスペンス巨編「MOZU」シリーズでも共演しているが、西島演じる公安のエース・倉木と今作の吉田は真逆なキャラクターだ。感情表現豊かで人間味に溢れ、優柔不断で妙に可愛らしい。「MOZU」や「ストロベリーナイト」などで見せてきた重厚でクールな西島のイメージと異なる、新たな一面を披露している。スーツ姿でビシッと決めながら、おろおろと狼狽えて、動揺し、困惑する姿も見ものだ。
また、ポジティブ担当の石橋を演じた神木も脳内会議のムードメーカー的存在を好演。暴走しがちなネガティブ・池田と激しくバトルしたり、衝動的なハトコを優しく落ち着かせたり、慌ただしく立ち回りながらも、明るく楽しく前向きな意見を繰り出す。息の合った掛け合いも見応えがあり、長台詞すらも生き生きと演じている。能天気と言われてもみんなに反対されても常に真っ直ぐ前を向く、陽に全振りしたような脳内キャラクターという難役も見事にハマり役にしてしまう、流石の演技力の高さを見せた。
現実と脳内がころころと切り替わり、独特の掛け合いを見せる本作。ヒロイン・いちこはどうすればより良い人生を送れるのか、脳内メンバーたちは真剣に思い悩み、衝突しながらも激しく議論していく。特殊な設定の物語だが、真木や西島、神木ら演技巧者たちによって悩める女性のリアルな心情を見事に描き出している。
文=中川菜都美
放送情報【スカパー!】
脳内ポイズンベリー
放送日時:2024年12月25日(水)21:00~
チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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