石坂浩二、渥美清、西田敏行、上川隆也...数々の名優が作り上げてきた「金田一耕助」シリーズの魅力

帽子を脱ぐと、まるで鳥の巣のようにボサボサな髪。いつ洗ったのかわからない羽織袴に下駄を履いたスタイルで、眠そうな目をしている怪しさしかない中年男性。しかし、その頭脳は驚くほどに明晰で、もじゃもじゃ頭をかき回しながら鋭い推理で難事件を解決していく...。

日本を代表する大作家・横溝正史が生み出した名探偵・金田一耕助が登場する推理小説は、そのドラマチックな物語で多くの読者を惹きつけ、さまざまな作品が映画やドラマ、舞台などのさまざまなメディアで愛され続けてきた。ビジュアルのインパクトもさることながら、圧倒的な推理力で昭和時代独特の湿度を持った陰惨な事件を見事に解決に導く名探偵は、多くの人々を魅了。メディア化作品の数と比例するように、金田一耕助を演じてきた俳優陣も実にバラエティ豊かなのだ。

戦後の日本映画界の大スター・片岡千恵蔵は、1947年の「三本指の男」で、原作とは異なる洋装でスタイリッシュな金田一像を作り上げ、金田一シリーズの不動の人気を確立。続く池部良ら銀幕スターたちも先輩に習い、スーツ姿で事件を解決してきた。1961年に「悪魔の手毬唄」で金田一を演じた高倉健はオープンカーにサングラス姿、1975年の「本陣殺人事件」では中尾彬がジーンズ姿で登場するなど、制作当時の流行ファッションを意識した装いで攻めた。そんな時代を経て、原作準拠のビジュアルを初めて取り入れ、その後のメディア作品における固定化に大いに貢献したのが、市川崑監督・石坂浩二主演というゴールデンタッグによる1976年の映画「犬神家の一族」だった。

市川監督＆石坂浩二版「金田一」シリーズが空前の大ヒットを続ける中で、TVドラマシリーズでは古谷一行が、映画では1977年に『男はつらいよ』シリーズで知られる渥美清が映画「八つ墓村」で、そして1979年には西田敏行が「悪魔が来りて笛を吹く」で、それぞれ金田一耕助を好演。それぞれの役者が自身の持ち味を活かした名探偵像を作り上げてきた。

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