人気漫画家・ヤマザキマリの出世作を実写映画化した本作で阿部が演じているのは、現代文明に接し、カルチャーショックを受ける古代ローマ人・ルシウス。ローマ帝国と"テルマエ"と呼ばれる公衆浴場をこよなく愛する浴場設計技師のルシウスは、"常にくつろげる空間"としてのテルマエを作るべく自問自答を繰り返している男性だ。そんなルシウスの生真面目さを、阿部は淡々としたモノローグと無表情で表現。よりよいテルマエを生み出すために、現代日本の技術やアイディアに驚くリアクションや、積極的に取り入れようとする姿勢とのギャップによって、絶妙な笑いを作品にもたらしている。そして、テルマエや現代日本の銭湯での入浴シーンで惜しげもなく披露する鍛え上げられた肉体にも、阿部の役作りにかける並々ならぬ情熱が感じられるはずだ。
そして、ルシウスとの出会いによって大きく運命を動かされる漫画家志望の真実を演じているのが、人気・実力ともに日本を代表する役者として成長した上戸だった。真実の行きつけの銭湯で、女湯に現れた全裸のルシウスの姿に、「ケンシロウ...」と思わず呟いてしまうほど、漫画「北斗の拳」を愛している真実。頭に体重計を投げつけられ、その場で気絶したルシウスをスケッチしてしまうほど、漫画を書くことが大好きな女性だ。
ルシウスが倒れた瞬間に瞳を輝かせたかと思いきや、彼に接近し、その肉体美をスケッチブックに描くシーンでの上戸の真剣な眼差しからは、真実がルシウスと同じ、自分の仕事に全力で向き合う人間であることが伝わってくるのだ。そして、意識を失い続けるルシウスが男湯にいた老人たちに連れ去られるシーンで、上戸は「今、スケッチしているのに連れて行かないでよ!」とでも言うような真実の内心を豊かな表情のみで語り、阿部に勝るとも劣らないコメディセンスを披露している。
ヨーロッパ最大級の撮影所・チネチッタのオープンセットで撮影された古代ローマの場面では、阿部以外にも、外国人たちに混じって、日本人俳優たちがローマ人を熱演。皇帝役の市村正親をはじめ、北村一輝、宍戸開、勝矢といった役者陣の濃いビジュアルも見どころのひとつ。
日本人がこよなく愛する公衆浴場をテーマに、笑いと共に歴史も学べる本作。阿部と上戸の軽妙な演技も味わえる、極上のエンターテインメントムービーだ。
文=中村実香
放送情報【スカパー!】
映画「テルマエ・ロマエ」
放送日時:2024年12月30日(月)18:00~
映画「テルマエ・ロマエⅡ」
放送日時:2024年12月30日(月)20:00~
チャンネル:WOWOWシネマ
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