藤田まことの二面性光る!仕事人として躍動する映画『必殺! THE HISSATSU』

(C)1984松竹/ABCテレビ

故・藤田まことの代表作と言えば「必殺シリーズ」。仕事人である中村主水役を演じ、世間の「彼といえば...」のイメージを確立したはずだ。

元々の藤田はコメディ作品での活躍が多く、喜劇役者というイメージが先行していた。それだけに、当初オファーを受けた際には中村主水という役柄を演じることに抵抗もあったという。しかし、情けない男に見える一方で、実は腕利きの殺し屋というこれまでになかったような"仕事人"となったことで、彼独自の色を加えていくことに成功する。

(C)1984松竹/ABCテレビ

藤田が持つ唯一無二のキャラクターもあって、「必殺シリーズ」はいつの時代も愛されて大きな人気を博したが、「必殺シリーズ」通算600回記念として製作された映画『必殺! THE HISSATSU』は特に大ヒットを記録している。

世直しのために"仕事"を引き受けるという要素はそのままに、今作品では敵との"団体バトル"要素も追加。身元不明の遺体が次々と上がるという不穏な始まりとなっており、実はそれが過去の仕事人であることが明らかになる。そんな仕事人殺しを行っているのは誰なのかという黒幕を追う物語となっており、最後には中村主水や飾り職人の秀(三田村邦彦)、何でも屋の加代(鮎川いずみ)らおなじみの面々が力を合わせ、黒幕と対峙していく。

ドラマ版では通常メインに据えられる恨みを晴らすというパートは最小限となっているが、今作ではドラマのスペシャル版のような印象を与える要素を加えている。例えば、作品の花形である暗殺術は顕著で、耳かきで脳を突いたり、鋭利な瓦を投げたり、お面の形をした凧で宙に浮かせたり、多種多彩だ。今さら「ありえない」と指摘するのは全くもってナンセンスで、「これを待っていました」と言いたくなる様式美の美しさを感じられる。

最後には潜水艇で追手をまくというおまけつきで、時代劇にはそぐわないような要素も登場。しかし、それすらも楽しめるひとつのギミックとして存在感を得ており、やはり「必殺シリーズ」という看板としての大きさを改めて再認識できる。

変わらないものがあるとすれば、中村主水を演じる藤田まことの喜怒哀楽のギャップだ。表向きは南町奉行所の定町廻り同心として働き、大して仕事もしていないように見える職務怠慢も目立つ。上の人間からどやされても、へらへらと受け流すことしかできない。家に帰っても婿殿として妻や義母からひどい扱いを受けることも少なくなく、へこへこと過ごす姿が印象的だ。

しかし、一度裏稼業に出向けばすぐにイメージは一変する。真剣ではなく竹光を持ち歩いていることを義母に指摘される情けない姿を見せた直後に、次々と敵を切り裂いていく様子は爽快とさえ表現できる。しかも、中村主水自身が表のうっぷんを裏で晴らしているというわけでもなく、裏稼業もあくまで仕事としてやっているということが伝わってくるような渋い表情がクールだ。ひょうきんな顔も、裏での冷徹な顔も両立させられるのはやはり藤田まことならではと言えるのではないだろうか。

(C)1984松竹/ABCテレビ

2007年まで中村主水を演じた藤田。以降は東山紀之が中村主水を引き継いでいるだけに、「中村主水=東山紀之」と連想する人も少なくないかもしれない。しかし、藤田の二面性を持つような中村主水を改めて見ていると、後の東山に与えた影響は大きいのだと感じさせられる。中村主水の原点を探るという意味でも、今作は大きな意味を持つ。故藤田にも大きな敬意を表したい。

文=まっつ

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放送情報【スカパー!】

必殺!THE HISSATSU
放送日時:2025年1月2日(木) 9:45〜12:00
2025年1月13日(月) 13:00〜
2025年1月26日(日) 8:00〜
チャンネル:WOWOWプラス

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