本作における名探偵・金田一耕助は、事件の解明こそするものの、語り部に徹した静かな役どころだ。あくまで本筋は、落ち武者伝説と連動して起こった村人32人殺しの凄惨さや自身の出生の秘密を追う辰弥が続々と起こる連続殺人に巻き込まれる波乱の展開にある。山間の村の風景に加えて、重要な舞台となるのが大鍾乳洞という演出も素晴らしい。秋芳洞など、国内に点在する8か所ものの鍾乳洞をロケしてつなぎあわせた場面は、漆黒の画面の不気味さが視聴者の不安を煽る。村人が落ち武者を嬲り殺しにするシーンや32人殺しの凄惨さは目をそむけたくなるほどで、映像的な見どころが随所に用意されている。
主人公の辰弥を演じる萩原健一は、本作では終始抑えた演技で役者としての幅を発揮。当時はワイルドなタイプの役柄を得意としたが、本作でのクールな演技はじつにカッコいい。美也子を演じる小川真由美はミステリアスで美しく、妖艶な魅力。金田一役である渥美清の落ち着いた佇まいは、ミステリー色満載の本作において安心感を与えてくれる。また、冒頭での加藤嘉をはじめ、犠牲者となる被害者の「死にざま」が凄まじくショッキングなのも特徴。特に落ち武者の尼子義孝を演じる夏八木勲が死ぬ場面は、夢に出てきそうなほど恐ろしい。派手さこそないが、非常に芸達者な俳優陣がそろって、キャスティングにも味がある。山崎努、山本陽子、市原悦子、藤岡琢也、下条正巳、大滝秀治、花沢徳衛、下条アトム、綿引洪と名前を列挙するだけでも、昭和の映画ファンには感涙ものだろう。さらに名もなき若武者役で「北の国から」の主役・田中邦衛と「七人の侍」の稲葉義男を起用するという贅沢さ。また、出番は少ないが、辰弥の少年時代を吉岡秀隆が演じており、名作ドラマ「北の国から」で親子を演じた2人が顔を揃えたことになる。ちなみに吉岡は後に金田一耕助役で八つ墓村に出演している。
本作はある重要な人物が登場しないなど、原作小説とは大幅に改変された部分があるが、結果的に真犯人が判明した際の衝撃度がより増している。本作以降の映像作品にもこの点が大きな影響を与え、原作に比較的忠実な作品においても、本作の影響が見て取れるなど、後の「金田一ブーム」の牽引に大きな役割を果たした。渥美が演じる金田一耕助のイメージこそ、現代の我々が抱く印象とは異なるものの、映画としても完成度は極めて高い名作だ。「祟り」に重点を置いたため、クライマックスのホラー的な演出には賛否両論あるところだが、そこは野村監督らスタッフが強くこだわったところだろう。豊川悦司が金田一を演じた1996年版映画をはじめ、稲垣吾郎主演の2004版ドラマ、吉岡秀隆主演の2019年版ドラマも好評だったが、やはり萩原健一をはじめ、昭和の芸能界を支えた味のある名優たちが一堂に会した1977年版「八つ墓村」の迫力と出来栄えはひと味違う。この機会にぜひ確かめてもらいたい。
文=渡辺敏樹
放送情報【スカパー!】
八つ墓村(1977)
放送日時:12月28日(土)13:00~ ほか
放送チャンネル:WOWOWプラス 映画・ドラマ・スポーツ・音楽
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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