草なぎ剛(※「なぎ」は正しくはゆみへんに「剪」)が主演を務め、新垣結衣がヒロインとして共演し話題となった映画「BALLAD 名もなき恋のうた」(2009年公開)。原作は2002年公開の映画「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦」で、戦国時代にタイムスリップした野原一家が活躍する物語。この作品は、息の長い人気を誇る劇場版「クレヨンしんちゃん」シリーズの中にあって、大人も泣ける名作として知られている。
実写化にあたっては、原作で多くの人の涙を誘った武士・井尻又兵衛と廉姫との悲恋物語を中心に据えた内容となっている。それだけに、又兵衛を演じた草なぎと、廉姫を演じた新垣の演技に注目しながら観たい作品だ。
■純で無骨な武士・又兵衛を雰囲気たっぷりに演じた草なぎ剛
草なぎが演じた又兵衛は春日の国に仕える武士で、"鬼の井尻"と呼ばれるほど武勇に優れている。物語で最初に登場するのは、現代の小学生・川上真一がタイムスリップして、又兵衛の部隊のそばに迷い込んだ時。鎧兜をまとい、馬上にいる又兵衛の姿、表情はとても精悍で、まさに戦国の武士といった雰囲気だ。
そしてその時、真一に救われたことがきっかけとなって、又兵衛が真一の面倒を見ることになる。両親と離れてしまった真一に、両親に宛てて文を書こうと提案したり、励ましたりと優しく接する姿には、草なぎ自身が持つ柔らかい雰囲気がそのまま出ている。武士としての精悍さ、人としての温かさを併せ持つ又兵衛という人物像に、実にぴったりハマっているのだ。
そんな又兵衛は、春日の国の姫・廉姫に想いを寄せている。しかし、身分の違いや奥手な性格もあって、それを表には出せずにいる。
物語は、近隣の有力大名・大倉井高虎(大沢たかお)が、美人と評判の廉姫に婚儀を申し込みに来た時に大きく動く。春日の城に押しかけ、勝手に婚儀の話を進める高虎から目を逸らした廉姫が視線を送ってきた時には、又兵衛も迷いの混じった苦しげな表情を見せる。また、廉姫に、高虎との結婚について「お前は本当に賛成なのか?」と問われた時には、自分の心を握りつぶすような表情で顔を背ける。
そういった表情からは、廉姫を想いつつも、国の存続を第一に考える武士としての気持ちが伝わってくるし、身分や勢力の優劣に翻弄されるつらさが滲み出ている。自由な恋愛が許されない時代ゆえの葛藤が本作の軸であり、それをしっかり伝える草なぎの演技は秀逸と言えるだろう。
■戦国の世に翻弄されながらも、想いを秘めた廉姫を鮮やかに演じた新垣結衣
放送情報【スカパー!】
BALLAD 名もなき恋のうた
放送日時:2025年2月1日(土)21:00~ ほか
チャンネル:WOWOWプラス
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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