■調子のいい"昭和のサラリーマン"を本木雅弘がコミカルに表現
奔放かつ大人な色恋を繰り広げる長女に対し、次女の巻子(尾野真千子)は、年頃の子どもを持つ平凡なサラリーマン家庭の専業主婦。その夫・里見鷹男を本木が演じ、近年の硬派なイメージを一新するような演技でいい味を出している。
人あたりが良い鷹男は、家族会議でヒートアップする姉妹をいさめるなど、四姉妹の仲を取り持つハブのような存在だが、義理の父・恒太郎(國村隼)の肩を持ったり、四女・咲子(広瀬すず)が彼氏と揉めた際には「男とは、女とは...」と講釈を垂れたりと、なにかと男に都合のいい言葉を並べる。
妻の家族には気を配る一方、秘書の啓子(瀧内公美)にうつつを抜かし、肝心の家庭のことはないがしろにしがち。疑惑の関係が妻を追い詰めているとも微塵も思ってもいないのだからのんきなものだ。
浮気がバレそうになれば開き治って取り繕うなど、本木はオロオロとした顔つきや独特の喋り方で男の見苦しさや軽薄さをコミカルに表現。巻子のある言葉を受けての血の気が引いた表情をはじめ、女性の抱える阿修羅な一面を浮き彫りにするリアクションはお見事だ。
■松田龍平、藤原季節が姉妹の正反対なパートナーを好演
そんな愛憎渦巻く2組に対し、不器用だが純粋な恋模様を紡いでいるのが、三女・滝子(蒼井優)と興信所で働く勝又(松田龍平)のカップル。恒太郎の浮気調査をきっかけに出会った2人は、仕事の関係から徐々に距離を縮めていく。
松田が独特の雰囲気を生かし演じる勝又は、口下手で頼りないが浮気者ばかりの本作で唯一の誠実な男。男女の関係に嫌悪感を抱きつつも、そんな人柄に惹かれ徐々に恋慕を募らせていく滝子の女の顔や感情の変化を引き出していく。
<配信情報>【Netflix】
「阿修羅のごとく」独占配信中
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