山田裕貴の進化した演技の深淵に触れる!「ペンディングトレイン−8時23分、明日 君と」

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(C)TBSスパークル/TBS

同作は、偶然乗り合わせた乗客たちが、なぜか何もない世界にやってきてしまうという内容なのだが、登場人物たちの背景もしっかり描きながら行われる、未曾有の状況下でなかなかまとまらない乗客たちのリアルな人間描写が魅力の1つとなっている。「何が起こったのか?」というミステリー要素や、乗客内で多発するトラブルなどのサスペンス要素に加え、人間性が変わっていくさまが鮮明に描かれているため、現実離れした設定ながら本当に起こり得るような感覚に陥るほどの説得力がある。

それはひとえに役者陣の演技のたまものだろう。山田を筆頭に、若手では頭ひとつ抜けている上白石萌歌、現在話題作にひっぱりだこの赤楚衛二、さまざまな作品で存在感を見せる井之脇海や古川琴音、さらには杉本哲太、松雪泰子というベテランまでが脇を固めるという実力者揃いの座組で、彼らが織り成す人間物語が作品に重厚さをもたらしているのだ。

中でも、山田演じる萱島と赤楚演じる白浜の関係が縦軸となって物語の核を形成しているのだが、この2人が演じる真逆のキャラクター性が面白い。「1人も脱落者を出さず、なんとか全員をまとめて元の世界に帰ろう」という王道のヒーロー像の白浜に対し、萱島は「元の世界に帰りたいが、おそらく帰れないだろう」というリアリストのスタンスで、2人は事あるごとに衝突し、そのたびに互いのキャラクター性のコントラストが色濃くなっていく。

(C)TBSスパークル/TBS

"人間の善性"を信念を持って力強く真っ直ぐ演じる赤楚の演技も素晴らしいのだが、なんと言っても山田の演技が圧巻。萱島は、過去に起因するある悩みを抱えており、その悩みから素直に気持ちを表せない天邪鬼な"ひねくれ者"なのだが、このキャラクターを体現する山田の演技が秀逸なのだ。他者に対してアウトプットすることとは違う萱島の本音を、目や表情、口調、雰囲気などで同時に表して"ひねくれ者"を見事に好演。

例えば"右手と左手を別に動かす"や"手と足を別に動かす"ように、同作での山田は同時にまったく別の表現を行っており、演技の上でも難易度が高いのだが、これをしっかりと視聴者に伝える表現力が見事といえる。例を挙げると「AをAとそのまま表現するのではなく、AをBやC、DなどAを使わず表現する」というような、高等技術のオンパレードなのだ。これがまた赤楚の真摯で真っ直ぐな演技とも対照的で、キャラクターだけでなく演技の手法でもコントラストを濃くしており、2人の掛け合いのシーンは思わず息をのんでしまうほど。

予測不可能のストーリーや出演者たちの名演を楽しみつつ、山田裕貴の"カメレオン俳優"と呼ばれ始めた時代から確実に進化している演技の深淵に触れてみてほしい。

文=原田健

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放送情報【スカパー!】

ペンディングトレイン-8時23分、明日 君と
放送日時:2025年2月10日(月)18:00~[#1~#5]、2025年2月11日(火)18:00~[#6~#10]
チャンネル:TBSチャンネル2
※放送スケジュールは変更になる場合がございます

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