
ハリウッドが描く戦国スペクタクル・ドラマシリーズ「SHOGUN 将軍」(2024年)がアメリカの賞レースを席巻している。主演を務めた真田広之は、第76回エミー賞ドラマシリーズ部門、第82回ゴールデングローブ賞テレビドラマ部門ともに日本人初の主演男優賞受賞を果たした。
真田や主演女優賞に輝いたアンナ・サワイはもちろんだが、2人に引けを取らない演技で高く評価されたのが浅野忠信だ。エミー賞では惜しくも受賞を逃したがゴールデングローブ賞では日本人初の助演男優賞を受賞。ハリウッドデビュー作となった2011年からの「マイティ・ソー」シリーズをはじめ、「沈黙ーサイレンスー」(2016年)、「MINAMATA-ミナマタ-」(2020年)など、多くの国際的な活動と挑戦が大きな栄誉として実を結んだ。

(C)2024 The Box Man Film Partners
そんな歴史的快挙を成し遂げた浅野の出演作で、昨年注目を集めたのが「箱男」(2024年)だ。3月30日(日)にWOWOWシネマで放送される本作は、第74回ベルリン国際映画祭ベルリナーレ・スペシャル部門に正式出品され、映画祭ディレクターをして「今年一番クレイジーな映画」と言わしめた話題作。
原作は、世界中に熱狂的な読者を持つ現代日本文学屈指の鬼才・安部公房の代表作の一つとして知られる同名小説。1973年の発表から映画化の企画が立ち上がっては消えていたが、最終的に石井岳龍監督が安部公房本人から直接映画化を託される。しかし、1997年のクランクイン前日に撮影が突如頓挫し、幻の企画となったエピソードがある。
それから27年、映画化を諦めなかった石井監督により、奇しくも安部公房生誕100年にあたる2024年に完成を迎えた。インディペンデント映画の最前線を駆け抜けてきた石井監督の新作に、企画当時から主演に起用されていた永瀬正敏に加え、浅野の出演も決定。1990年代から2000年代初頭のミニシアターブームを牽引した永瀬と浅野の2大スターが顔を揃えた。

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ダンボールを頭からすっぽりとかぶり、都市の片隅をさまよいながら一方的に世界を観察し続ける奇妙な男"箱男"。完全な孤立と孤独を得て社会の螺旋から外れた"本物"の存在である。カメラマンである"わたし"は、アパートの外から自分をのぞく彼に気付き、心を奪われる。そして、自らもダンボール箱をかぶり、箱男としての一歩を踏み出すことに。しかし、本物の箱男になる道は険しく、数々の試練と危険が襲いかかる...。
"わたし"を演じた永瀬は、難解な世界観の中で"箱男"になろうとする人間を熱演。体を覆い隠せるほどの大きなダンボール箱をかぶり、小さな穴から世界をのぞいては、何事かをノートに書き記していく。完全な匿名性や孤独を目指すが、ふとした時に心は揺れ動き、人間性を捨てきれない。そんな人間臭さや複雑な胸の内も永瀬が強い熱量で表現。27年を経て実現した企画への熱い思いを感じさせた。
そんな"わたし"の存在を乗っ取ろうとするニセ医者を浅野が演じている。医師免許を持たない彼は、箱男を完全犯罪に利用しようと企む軍医のサポートをしながら、"わたし"をつけ狙う。何らかの目的を感じさせるが正体は分からない。浅野が持つ独特の雰囲気と危険な色気が、物語の世界観とマッチする。
ニセ医者はだんだんと箱に対する執着を見せ、次第に常軌を逸した振る舞いをしはじめる。謎の女・葉子と軍医のやりとりを、箱をかぶって再現したり、見るとかぶるとでは大違いだと嬉々として感想を述べたり、さらには箱男同士で激しく戦うなど、浅野は振り切った演技を披露。何かに取り憑かれたかのような異常性、シュールな狂気も体現していく。
放送情報【スカパー!】
箱男
放送日時:2025年3月30日(日)21:00~
五条霊戦記//GOJOE
放送日時:2025年3月26日(水)23:15~
チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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