
――園村監督とはどのような話し合いがありましたか?
「正直、もっと距離感が変わるのかなと思っていたんですけど、びっくりするくらい何も変わらなくて(笑)。アクションのときの『もう1回、もう1回』という淡々とした追い込み方も変わらないし、芝居の部分ではすごく任せていただきました。だからこそ、自分の中でふみかというキャラクターをどう作るか、すごく深く話し合うことができて。ある時からは、私がふみかとして持っていくものを信じてくれているのを感じて、それが本当にありがたかったです。『ちゃんと任されてるんだ』と思えた瞬間が、私の中でプレッシャーではなく、背中を押してくれるエネルギーになりました」
――本作にはさまざまなアクションシーンがありますが、特に印象に残っている場面を教えてください
「アクションでいうと、やっぱりバーでの戦いのシーンです。おそらく一番長いアクションシーンだったと思うんですけど、私にとっても、あそこが最も濃かったです。あのシーンでは、ふみかと工藤を交互に演じながら戦うという構成になっていて、自分の中で3つくらいの要素を一度に連動させながら動かなきゃいけなかったんです。だから単純に戦うだけじゃなくて、人格をスイッチしながらアクションを繰り返すという意味で、かなり難しかったです。でもそれだけに、記憶にも濃く残っていて、挑戦したなって心から思えるシーンでした」

――アクションとはまた違った意味で印象的だった芝居のシーンはありますか?
「後半に、ふみかの気持ちが一気に爆発するシーンがあるんです。個人的には、あの場面がすごく楽しかったです。何かが限界を超えて、ふみかの心がぶちまけられる瞬間というか。現場では『自分をコントロールしないでやってみよう』と決めて、そのまま感情に身を委ねて演じました。そしたらもう、思ってもいなかった言葉が口からどんどん出てきたんです。セリフもどこかでぐちゃぐちゃになっていて、覚えていたこととは全然違う言葉が湧き出てきて。結果的にアドリブのようなセリフがいっぱい混ざってたと思います。でも、それがすごく気持ちよかったんですよね。芝居って本来、こういう瞬間があるべきなのかもしれないって感じられるぐらい、開放された時間でした」
――あのシーンは圧巻でした。アドリブは一発でOKだったんですか?
「実は、最初に撮ったあと、何か機材トラブルがあって『もう一回やる?』みたいな空気になったんです。でも、現場のみなさんがすごく優しくて、『今のでよかったんじゃないか』『どうにかできないかな』という小さな会議が始まって(笑)。その気遣いがすごく嬉しかったです。でも最終的にはもう一回やることになって。ありがたいことに、2回目もまた感情がちゃんと爆発してくれて、ちゃんと撮れました。あの空気感、スタッフさんとの信頼関係があったからこその時間だったなと思います」
――そのシーンを実際にご覧になってどう感じましたか?
「...あっという間だなと(笑)。自分の中では、ずっとエネルギーを振り絞って、心も身体も絞りきった感覚だったので、きっと長尺で映ってるんだろうなと勝手に思っていたんです。でも、完成した映像を観たら、意外と短くて。でもそれって悪い意味じゃなくて、『芝居ってこうやって濃密なものが、あっさり映像になるんだ』という、新しい発見でもありました。逆に言えば、その短い尺の中に濃度が詰まってるってことなんですよね。それに気づいたとき、やってよかったなと心から思えました」

――アクション映画の主演として、これまでのキャリアが結実した作品でもあると思います。ご自身にとってアクション映画とはどんな存在でしょうか?
「すごく身近にあるものなのに、すごく遠いもの...そんな不思議な存在です。スタントマンやスタントウーマンの方々と一緒にいる機会が多かったからこそ、自分の中でアクションに対するリスペクトがどんどん大きくなっていきました。大きな声で『自信があります』って言えたらかっこいいんですけど、実際はまだまだです。でも、アクションを通してもらえるエネルギーって本当に大きくて。動いているときの泥臭さや美しさって、観ている人の心にも響くんですよね。だから、またアクション映画に携われるなら、全力でやりたいです」
――改めて『ゴーストキラー』で得たものは何でしょうか?
「この作品は、挑戦の連続でした。でもその分、自分の中からしか生まれない感情や表現を、信じられるようになった気がします。どれだけ難しくても、自分の中でしか生まれない"何か"がある。その実感を、この作品が教えてくれました。私にとって『ゴーストキラー』は、自分の中の"限界"と"希望"を同時に感じた作品です。見てくださるみなさんにも、そんな強さと葛藤のエネルギーが届いていたら嬉しいです」
――高石さんにとっても大切な作品になっていきそうですね
「大変なことはたくさんありました。でも、それ以上に『やれてよかった』『この現場にいられてよかった』という思いのほうが強いです。アクションでいえば、工藤とふみかの人格を行き来する複雑さ。芝居でいえば、コントロールを手放すことの怖さ。でも全部ひっくるめて、やるしかないと毎日自分に言い聞かせていました。その結果として、やり切ったと思えている今が、すごく心地いいです。この映画を通じて、自分の中でまたひとつ芝居の扉が開いた気がします。観てくださった方にも、その熱が伝わっていたら嬉しいです」
取材・文=川崎龍也 撮影=MISUMI
映画情報
映画『ゴーストキラー』
2025年4月11日(金) 全国公開
公式サイト:https://ghost-killer.com/
公式X:https://x.com/gk__movie
詳しくは
こちら
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