最大最強の宿敵となる覇者・徳川家康(内野聖陽)との最終決戦(最終話)では、信繁が家康一人に狙いを定め、ただの一騎で突き進み対峙する。その後、信繁の人生最期のラストシーンまでが奥深く印象的に描かれる。

信繁の幼なじみで生涯のパートナーとなるきりを演じた長澤まさみ、秀吉の側室で信繁と深い絆を結ぶ茶々役が反響を呼んだ竹内結子ら、戦国ヒロインたちの存在も、ドラマを盛り上げた一因だ。

信繁の波乱の人生に寄り添い続け、悩みもがきながらも生きるきりを長澤はストレートな芝居で熱演。現代女性のようなセリフ回しが斬新と注目を集め、信繁への叱咤激励や、終盤で登場する伝説の"口吸い(キス)"シーンも、脚本にはない2人のアドリブだったことが後日明かされており、堺との好相性ぶりが窺える名シーンとして視聴者の記憶に刻まれるものとなった。

竹内演じる茶々(後の淀殿)は天真爛漫かつ小悪魔的な魅力で信繁を翻弄し、その"無邪気さ"がハマり役と話題に。息子・秀頼(中川大志)への凄まじい愛情など、茶々の揺れ動く感情を繊細に表現し、その美しさと好演ぶりが光った。

さらに"真田丸"の世界観を象徴する漢字2文字の副題(サブタイトル)も毎話注目の的に。第1話「船出」から第49話「前夜」まで全てに付けられ、最終回の言葉はネットでの予想合戦も大いに盛り上がったが、最終回はその意表を突く"無題"。これまた大きな反響が巻き起こることとなった。

放送から既に9年が経過した今も「好きな大河ドラマ」の上位にランキングされることが多い「真田丸」。堺雅人、大泉洋、内野聖陽...と、演技巧者が揃った三谷ワールド全開の人間ドラマを、美しくも強かに生き抜く戦国ヒロインの存在にも注目しながら見返したい。

文＝川倉由起子