鈴木亮平の誠実さを宿した真っ直ぐな目が役に説得力を与えたドラマ「テセウスの船」

俳優

(C)東元俊哉/講談社 (C)大映テレビ/TBS

鈴木が演じる文吾には、信頼したくなる真っ直ぐさがある。警察官として村人たちから信用されているのはもちろん、家族からも愛され、31年間も父を恨んでいた心にさえ「この人を信じたい」と思わせる男だ。それは、鈴木の穏やかながらもどっしりとしたセリフ回しや、家族の前で見せる温厚で明るい表情と、村人を守らなければいけない局面に立った時の鋭い視線を携えた真剣な顔との演じ分けによるものだろう。そこには警察官としての使命感が滲み出ていて、文吾が人を殺めるような人間ではなく、人を守る正義感のある人間だという説得力がある。そして、鈴木自身が持つ誠実さを宿した真っ直ぐな目も、この佐野文吾という役柄に信頼感を与えている。

また、過去と現代を行き来する物語の中で、鈴木は1989年の現役警察官である文吾と、2020年の服役中で年老いた文吾の2つの時間軸の文吾を演じることになるのだが、その演じ分けも素晴らしい。かつては快活だった文吾が、心が面会に行った現代の刑務所の中では弱々しく枯れた声で心に話しかける。"いつか心が会いに来る"と時が経っても心のことを信じて待ってはいたものの、娘・鈴(貫地谷しほり)の新たな人生を邪魔したくないという気持ちや新たな証拠が出てくる希望がないことから、冤罪を証明することはすでに諦めてしまっている。その姿からは文吾が刑務所で独り過ごした年月の長さや、家族につらい思いをさせたことへの文吾の苦しみがひしひしと伝わってくる。白髪や肌の特殊メイクによる変化はもちろんあるのだが、猫背でやつれた風貌、声の出し方などから31年の時の経過を見事に表現しており、鈴木の役作りへのストイックさがうかがえる。

(C)東元俊哉/講談社 (C)大映テレビ/TBS

文吾は未来から来た素性もわからない、そして事件を止めたいがために時に不器用で不可解な行動に走る心のことを信じ、協力していく。そして心が自分の息子である事実や、心から告げられるこの先に待っている悲痛な未来に時に戸惑い、心とぶつかりながらも、心を受け入れて、共に音臼村を救うために手を尽くす。そんな時を超えてやっと築かれた親子の絆には、胸を打たれるものがある。

物語が進むにつれて、サスペンス要素も増していき、手に汗を握る緊迫感に包まれる本作。不器用ながらも奮闘する息子・心と、真っ直ぐな父親・文吾が辿りつく事件の真相を、ぜひその目で確かめてほしい一作だ。

文=HOMINIS編集部

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放送情報【スカパー!】

テセウスの船
放送日時:2025年5月26日(月)18:00~[#1~#5]、5月27日(火)18:00~[#6~#10]
チャンネル:TBSチャンネル2 名作ドラマ・スポーツ・アニメ
※放送スケジュールは変更になる場合がございます

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