本島純政の成長と重層的でシリアスなストーリーに魅了される映画「仮面ライダーガッチャード ザ・フューチャー・デイブレイク」

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決戦に向けて士気を高める宝太郎(本島純政)ら
決戦に向けて士気を高める宝太郎(本島純政)ら

(C)石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映AG・東映

本作のキーパーソンとなる未来の宝太郎/仮面ライダーガッチャードデイブレイク役はDAIGOが演じているが、彼は本編のテレビシリーズでは、仮面ライダーガッチャードデイブレイクの声のみの出演だった。つまり声優としての出演だったのだが、本作では"顔出し"で未来の宝太郎として登場する。さらに子供たちの人気が絶頂のお笑い芸人・小島よしおが謎の錬金術師・但馬鉄男役でゲスト出演。序盤でおなじみの「そんなの関係ねぇ!」も披露してくれる。カラフルな海パンに白衣を纏った姿がコミカルだが性格は真面目。未来の宝太郎のパートナーを務める優秀な錬金術師という役どころだ。

また、2024年9月から放送開始された次回作「仮面ライダーガヴ」より、主人公のショウマ・ストマック/仮面ライダーガヴ役の知念英和がテレビ放送に先駆けて登場することでも話題を呼んだ。仮面ライダーファンにとっては、仮面ライダークウガ、仮面ライダー電王、仮面ライダーW、仮面ライダーオーズといった平成ライダーたちが多数登場することでも胸アツだったはずだ。

本作は未来に行った宝太郎たちのパートと、現代に残った黒鋼スパナ/仮面ライダーヴァルバラド(藤林泰也)たちのパートとが並行する重層的なストーリー。そのため63分の尺に収めるのは相当難しかったと想像できる。それでも、様々な葛藤を乗り越えて未来の宝太郎と現代の宝太郎が団結して戦うまでを丁寧に描いたストーリーは見ごたえ充分。また、戦友としてのりんねとの絆の描き方もじつに感動的だ。当時は本島が19歳、松本は16歳と若いキャストがまさに体当たりで演じて、フレッシュな魅力もあるが、本作に1年間全力で取り組んできたという2人の成長を感じさせてくれる点も見どころとなっている。

若い主要キャストに加えて、やはり本作を支えているのはDAIGO演じるデイブレイクの存在だろう。彼の演技は非常に丁寧で、宝太郎の未来の姿であることを絶妙に意識させてくれる。現代の宝太郎を演じる本島の芝居に寄せているのではないかという配慮も感じさせ、俳優としての力量を見ることができた。特に怒りをぶつける熱い芝居と迫力、過去の葛藤に悩む心情の表現など、深みのある演技が印象深い。

重層的で、二転三転する複雑なストーリーをコンパクトに収めた脚本も秀逸。ドラマ本編とは趣が異なるシリアスで重い展開に戸惑う視聴者もいるかもしれないが、ドラマ本編で張っていた伏線を本作で回収する場面もあり、ガッチャードの世界観の根幹を成す「応援」というテーマを本作に引き継いでいる点も素晴らしい。

脚本を手掛けた長谷川圭一は、美術スタッフから脚本家に転身。「ウルトラマンティガ」でデビューし、「ウルトラマンダイナ」ではメインライターを務めた。仮面ライダーシリーズには「仮面ライダーW」から参加し、「ガッチャード」では同シリーズ初のメインライターを担当。人間の奥底に潜む悪や心の闇、怨念が絡んだ設定を作品に盛り込むことが得意で、ハードで重いテーマを扱ったシリアスな作風が特徴だ。本作にもそんな彼の持ち味が十二分に生かされている。

本島純政と松本麗世のフレッシュコンビの体当たりの演技に加え、DAIGOや小島よしおらが印象的な芝居で抜群の存在感を発揮する映画「仮面ライダーガッチャード ザ・フューチャー・デイブレイク」。子供向けとは思えないシリアスなストーリーだが、戦闘場面を中心にライダーシリーズ伝統の魅力はしっかり踏襲。特に平成ライダーのファンには大いに堪能できる作品である。

文=渡辺敏樹

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放送情報【スカパー!】

仮面ライダーガッチャード ザ・フューチャー・デイブレイク
放送日時:2025年6月8日(日)12:00~
放送チャンネル:東映チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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