内野聖陽、岡田将生を始め、豪華キャストがラストまで気を抜かせない、痛快クライムサスペンス映画「アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師」
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見どころは多々あるが、まずは堅物で小心者の熊沢が、詐欺師集団による"教育"で大胆さを身につけていく過程。内野の演技は完璧で、セリフ回しの強弱や微妙な表情の変化など、場面に応じて細やかな芝居を披露。乱暴な運転をする氷室にビビり、「法定速度を守れ」と叫んだり、強面男を前に逃げ出そうとするなど、小心者ぶりがピカイチだ。それでも橘相手のビリヤード勝負で示す大胆さなど、演技の振り幅が大きな役を巧みに演じている。内野はかつてTBS系ドラマ「JIN-仁-」(2009年、2011年)で坂本龍馬を演じた際に、高知県の人々と交流して完璧な土佐弁をマスターするなど、徹底した役作りに定評がある。色気も抜群で男臭い役を演じたら天下一品だが、本作では一転して小心者の堅物公務員。そんな役どころでもリアルに感じさせるのはさすがだ。一方の岡田は、頭脳明晰な天才詐欺師・氷室役がまさにはまり役。クールで知的な雰囲気を醸しつつ、温かみのある優しさも感じさせるのは彼の真骨頂だろう。詐欺師集団のメンバーたちも、元女優の演技担当・白石美来(森川葵)、"当たり屋"の肉体派・村井竜也(後藤剛範)、偽造屋のメカ担当・丸健太郎(上川周作)、闇金業者・五十嵐ルリ子(真矢ミキ)とその娘・薫(鈴木聖奈)と個性派ぞろい。特に岡田とはNHKの朝の連続テレビ小説「虎に翼」でも共演した上川のエキセントリックな演技が印象深い。
熊沢の部下・望月さくら(川栄李奈)も重要な登場人物。川栄は現在放送中の日本テレビ系ドラマ「ダメマネ! -ダメなタレント、マネジメントします―」で主演を務めており、その振り切った演技でも評判だが、本作ではやや抑えた演技で画面を引き締めている。場の空気にふさわしい大人の演技という印象で、女優としての成長を感じさせた。橘を演じる小澤も嫌みたっぷりな悪役を好演。橘の憎らしさあってこそ、アングリースクワッドとの対決が盛り上がるわけで、小澤の演技が活きている。橘の会社の専属司法書士を務める酒井恵美子(神野三鈴)も妙な存在感があって印象的。熊沢の上司で中野北税務署の署長である安西元義(吹越満)も一癖あり、熊沢が氷室と繋がっていることに気づいて望月に監視を命じたりする。

物語は単純な騙し合いでは終わらず、ラストシーンまで怒涛の展開となる。共同脚本の岩下悠子は、「相棒」や「科捜研の女」シリーズで名を馳せた腕利きのストーリーテラーだけに、後半に畳みかける波乱の展開はお手の物。最後の最後に思わぬ「仕掛け」も待っているので、エンドロールまで気を抜かずに。撮影中はコロナ禍に見舞われスケジュール変更を余儀なくされ、上田監督自身も感染してリモートでの演出を強いられるなど、現場の苦労も多かったらしいが、2024年秋に公開に至った。そんな映画「アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師」は、内野を中心に芸達者な俳優陣が揃い、上質な演技合戦が楽しめる秀作。最後の仕掛けを見抜けるかどうか、その点にも注目して楽しんでほしい。
文=渡辺敏樹
放送情報【スカパー!】
アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師
放送日時:2025年6月1日(日)21:00~ほか
放送チャンネル:日本映画専門チャンネル
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