そのなかで佐野は、フェア(公平)を愛する九賀蒼太役を演じた。常に冷静沈着で、正義感の強い男に説得力を持たせた佐野。バラエティやイベントで見せる"愛されキャラ"とはまったく違う表情を見せるキャラクターとなるが、佐野自身は他人にも社会にも、そして自分にも厳しすぎる人である九賀の気持ちも「分かる」とコメントしている。M!LKのメンバーから「自分に厳しい」と言われることもあるそうで、決めたことや信じたことを捻じ曲げられると許せないという部分では、九賀との重なりを感じたという。

最終選考まで勝ち残った6人の就活生たちは、アイデアを出し合い、夢と未来を語り合い、お互いを称え合いながら仲間となり、絆を深めていく。しかしそれぞれの嘘と罪を暴く告発文が届くと、その和やかで温かな雰囲気は一変。会議室という密室で誰もが疑心暗鬼に陥る中、本音や本性がどんどんあらわとなり、声を荒げたり、涙を流しながら、怒りや焦りを剥き出しにしていく。

キャスト陣が会話劇によってその動揺を見事に表現しており、見ているこちらもその緊迫感にドキドキすること必至。若手俳優たちの実力とアンサンブル演技を目撃する意味でも、本作は必見だ。

嘘に次ぐ嘘の果てに明らかとなる、意外な犯人と驚きの真実。人間は多面的なもので、表や裏の顔を持つものだが、それが就職活動中であればなおさら、自分の良いと思われる一面を見出そうともがいているはずだ。どんでん返しに振り回されながら、あらゆる葛藤が浮き彫りとなっていく過程は見応えがあり、青春劇＆人間ドラマとしても深い味わいを残す1作となっている。

文＝成田おり枝