深澤が演じているのは、瞳の学生時代からの友人で、現在は葬儀社で働いている岸圭吾。瞳と大里美奈子(見上愛)と今でも3人で飲みに行く仲だが、実は学生時代から長年、瞳に片想いしている。それなのに自分が1年前に誘ったお笑いライブで瞳は現在の恋人の川上一馬(濱田岳)と出会ってしまい、その上「結婚することになりました！」と婚約の報告を受けることになる。

そんないわゆる"当て馬"的な役どころの岸を演じる深澤の演技は、実に自然体だ。岸は美奈子と2人で会う時には瞳の話ばかりし、"まさか結婚することになるなんて..."、"結婚がなしになればいいのに"と後悔や憎まれ口を口にしたり、瞳に結婚式の司会を頼まれたことを愚痴ったりと、報われない恋に頭を悩ませている。しかし、結局は結婚式の司会を引き受けることにしたり、瞳が傷ついていることを察した時には出勤前でも瞳のもとに駆け付けたりと、随所で優しい性格が垣間見える。そんな岸の優しさを深澤は内側から滲み出るように表現しており、観ている者にもそれがじんわりと伝わってくる。また、瞳に気持ちを伝えることができないまま、瞳と婚約者の二転三転する状況に振り回される岸の切なさも、ふとした瞬間の表情やまなざしで表しており、岸の切ない恋心が伝わってくる。

深澤演じる岸と、見上演じる美奈子は、瞳の良き友人であり理解者。雅彦のことはもちろん、結婚や婚約者との関係にも頭を悩ませる瞳の相談に乗って励まし、瞳の心を支える存在だ。岸は瞳だけでなく雅彦の相談にまで乗って、死期を悟った雅彦の願いを叶えようと手を尽くす。そんな岸を深澤が好感度たっぷりに演じている。

雅彦と瞳、人生の最期の時間に向き合いながら「結婚までにやりたいことリスト」と「死ぬまでにやりたいことリスト」を実現させていく父娘の姿を主軸に、２人を取り巻く人たちの人間模様も描く本作。切ない恋心を抱えながらどこまでも優しい青年・岸を演じた深澤の演技にも注目しながら見てほしい作品だ。

文＝HOMINIS編集部