山田裕貴や佐藤二朗をはじめ実力派俳優の競演によって人気ミステリー小説を映画化する「爆弾」など、話題作への出演が相次ぐ坂東龍汰。世代を代表する俳優となった彼が初めて映画単独主演を務めたのが、誰もが避けては通れない"大切な人を亡くした喪失感"に真摯に対峙した「君の忘れ方」だ。

8月23日(土)にＷＯＷＯＷシネマで放送される本作は、一条真也の「愛する人を亡くした人へ 悲しみに寄り添う15通の手紙」を原案に、作道雄監督が映画化した人間ドラマ。坂東が演じるのは、ラジオ番組の構成作家・昴。恋人である美紀との結婚を間近に控えていた昴だが、ある日、突然の交通事故で彼女が亡くなってしまう。

茫然自失の日々を過ごす中、昴は母・洋子に促され、故郷の岐阜へ帰省。洋子もまた、不慮の事故で夫を亡くし、いまだに心に傷を抱えていた。悲しみは癒えないと思っていた昴だが、喪失体験を抱えた人に寄り添い、立ち直るようにサポートする活動"グリーフケア"に足を運びながら、ある不思議な体験を通して美紀の死と向き合っていくようになる。

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当たり前のようにそばにいた恋人。喧嘩や仲直りを繰り返して過ごす、当たり前の日常が消えても、変わらずに朝はやってくる。そんな生活の流れから抜け落ちてしまったかのような昴の喪失感を、坂東が繊細な演技で表現している。

昴を演じる坂東は、決して泣き叫んだりするわけではない。しかしながら瞳からは輝きが消え、全身から気力を失っているオーラが放たれるなど、その表現が静かだからこそ、昴が深い悲しみの底にいることが伝わってくる。グリーフケアに通いながらも美紀の死をなかなか受け入れられず、彼女のことを覚えているから辛いのか、忘れていくから辛いのかと、暗闇の中でぐるぐると彷徨い続ける昴。彼が少しずつ前を向いていく様子をどこまでも丁寧に積み重ねていく坂東の演技は、観客それぞれの記憶や感情を呼び起こすようなリアリティにあふれている。