本作で内野が担うキャラクターは、オリジナル版で名優マ・ドンソクが演じた税務署員。税務署で働く真面目だけが取り柄の、地味で気弱な中間管理職の公務員だ。生真面目すぎてある意味では変わっているが、破天荒な検視官や風雲児といった圧倒的なオーラは一切ない。

滞納者にも強く出られず、橘からも見下されワインまでかけられてしまう。次々と現れる癖の強い詐欺師たちに脅かされ振り回され、おじさん呼ばわりまでされている。口調や表情、歩き方にも真面目さと実直さが滲み、地味なメガネと野暮ったいスーツ姿の熊沢には自信も貫禄もない。

だが、チームの面々に鍛えられて少しずつ変わっていく。冴えないおじさんっぷりが板に付いているからこそ、橘と対決する姿とのギャップに驚かされた。腐った組織や憎き橘、見て見ぬふりをしてきた弱い自分に対する強い怒りが、熊沢を突き動かしている。芝居という嘘をまるで本当のように見せる----。役者・内野の凄みが存分に生かされていた。

また、熊沢とタッグを組む天才詐欺師・氷室マコト役に岡田将生、詐欺師集団の一人で元女優の白石美来役に森川葵、悪名高い脱税王・橘大和には小澤征悦...と共演陣も豪華なキャスティングとなっている。スピード感のあるストーリー展開と、実力派揃いの演技合戦。上田監督と内野らキャスト陣の情熱で、見応えのある快作に仕上がっていた。

文＝中川菜都美